ほんとうに不思議な現象・・よくできた器械仕掛けのようです
幹や茎にトゲをもつ植物、葉っぱにトゲのある植物、などトゲにも色んな種類があります。それぞれが生きていく上で、トゲはどんな役割をしているのでしょうか。
葉っぱのトゲの代表種は「ヒイラギ」の葉です。若木はトゲトゲしい葉をつけていますが、老木になるにつれてトゲが無くなるのです。葉縁の鋸歯、すなわち葉針が無くなって全縁になるのですから不思議な葉っぱですねエ。
このようなヒイラギを例えて「ヒイラギ人生」といいます。若年の頃は人生経験も浅く、とかくトゲのある言葉や態度を現していたのですが、だんだんと年を重ねていくと人格的にトゲトゲしさがなくなり、角が取れて柔和な人になった人に対する人生訓です。
1.植物の自己防衛手段の謎・・ #
トゲの起源は「自己防衛」のためだとする説が多いのですが、害を及ぼす敵は動物か、鳥か、昆虫、なのかは明らかでないようです。トゲは本当に防御のために、葉・茎・枝などを変身させたのか..判らないことが多いのですが、動物に食べられることに対する防衛機能を果たしていることは間違いなさそうです。...物理的防衛
また、植物は捕食者からの防御のために「毒性成分」を含むことは昔から知られています。動物や鳥や昆虫から身を守るために「死に至らしめる成分」や「狂わせる成分、苦しめる成分」などを含んでいます。これらの毒性成分は防御の役目を果たしていることは明らかです。
トゲによる物理的防衛と毒性成分の化科学的防衛の両手段を備え持つ植物はないようです。 両方を備えるほど捕食される植物はまず生き延びることが難しいのではないでしょうか。
そんなに投資するほど植物にも余裕はないと思うのですが・・身近に生えているイラクサは棘(棘毛)と毒性を備え持つようです。
化学的防衛である毒性をもつ植物は次の種類があります。(帆柱山系に関係するもの)
*致死量を考慮
ジキタリス・ヒガンバナ・シキミ・トリカブト・キョウチクトウ・オモト・ドクゼリ・アセビなど
*狂わせる成分
ハシリドコロ・チョウセンアサガオ・ケシ・タバコ・エニシダ・トケイソウなど
*苦しめる成分
フクジュソウ・イチイ・ウマノスズクサ・スズラン・スイセン・ジャガイモ・ユズリハ・テイカカズラ・マムシグサ・イチョウ・ナンテンなど
2.もう一つの化学的防衛・・ #
植物は哺乳類などの動物から被食を免れようとする化学物質を持つことを述べたのですが、もう一つの被食防衛のための化学物質は「消化を阻害する物質」です。(二次化合物)
A)イネ科植物に含まれる珪酸は体内の微生物に有害だといわれています。採食を受ける場所の珪酸の含有量は高いといわれています。
B)植物体に含まれるタンニンは、消化酵素や食物のタンパク質と結合して消化、吸収を妨げること、また消化器内の微生物を殺したり、活動低下の作用をおこすことも知られています。人間がドングリを食べるときは、タンニンを除去(あく抜き)する生活習慣があります。
C)二次化合物の毒性として、サポニン(トチノキ・エゴノキ・ソテツの種子)、アルカロイド(トリカブトの毒やニコチン)、シアン(熱帯多雨林のパンギノキ)など。
D)これらの二次化合物の物質は、成長の早い遷移初期に生える種は、成長の初期にのみ生産し、成長の遅い樹木では生涯生産を続ける傾向があるといわれています。
E)また常緑樹と落葉樹を比較した場合に、常緑樹の方が二次化合物の含量が多いことが判っています。種子は被食されないためにも毒性の成分を含むのが普通です。
F)食物連鎖の自然界では食うか食われるかの日々の闘いがあります。植物の防衛に対して、動物側でも対抗手段を具備。毒性の少ないものから食べること、少しずつ多様に食べること、体内に毒性を無毒化する機能(発酵胃)と微生物との共生、などの食生活を進化させたのです。
3.トゲのいろいろ・・ #
トゲの起源は「自己防衛」のためだとする説が多いのですが、害を及ぼす敵は動物か、鳥か、昆虫、なのかは明らかでないようです。トゲは本当に防御のために、葉・茎・枝などを変身させたのか..判らないことが多いのですが、動物に食べられることに対する防衛機能を果たしていることは間違いなさそうです。...物理的防衛
また、植物は捕食者からの防御のために「毒性成分」を含むことは昔から知られています。動物や鳥や昆虫から身を守るために「死に至らしめる成分」や「狂わせる成分、苦しめる成分」などを含んでいます。これらの毒性成分は防御の役目を果たしていることは明らかです。
トゲによる物理的防衛と毒性成分の化科学的防衛の両手段を備え持つ植物はないようです。 両方を備えるほど捕食される植物はまず生き延びることが難しいのではないでしょうか。
そんなに投資するほど植物にも余裕はないと思うのですが・・身近に生えているイラクサは棘(棘毛)と毒性を備え持つようです。
化学的防衛である毒性をもつ植物は次の種類があります。(帆柱山系に関係するもの)
トゲとは、先の鋭く尖った硬い突起物で、針状のものと円錐状のものがあります。先が尖っていないもの、柔らかいものはトゲとはいわないのです。
針状で極細のものは、トゲとはいわないで刺毛(シモウ)といいます。イラクサの刺毛は刺さると痛いのですが、軟らかいのでトゲとはいいません。刺毛です。
トゲと間違いやすいのに「かぎ状毛」があります。アカネ科の果実の表面に密生しているような、鈎状に曲がった毛のことですが、ヤエムグラ、ヨッバムグラに見られます。
A)サイカチ、ハリエニシダ、クスドイゲ、ナワシログミなどのトゲは、茎や枝が変形したもので茎針(ケイシン)といいます。
B)バラ、サンショウ、ハリギリ、などは茎上の突起物で表皮が変形したもの。サルトリイバラ、ママコノシリヌグイも表皮の変形したものですが、よじ登るための鈎の役割をもつ。
C)葉が針及び刺に変身した植物は、サボテンが代表種。表面に多数の針状になった葉があるが、幼植物の段階では本来の葉のような形をとる場合がある。メギの刺も葉起源。
D)カラタチの茎上の刺は、茎(枝)の変形とされていたが、最近の研究では葉が著しく変形したものだとする。これを葉針という。ハリエンジュのトゲは托葉がとげになる。
カラタチの刺は葉腋に一個出ていて茎と同じような色をしている。葉腋からは普通は枝が伸び出してくるのだが、柑橘類ではこの枝につく第1番目の葉が変化したものである。
E)葉の変形したものとして、仮葉(アカシアの各種)、巻きひげ(葉が細長く伸びて、葉身がなくなってしまい、他の物にからみついて植物体を支える働きをするもの)、哺虫葉(食虫植物にみられる特殊な葉・ウツボカズラ、ハエトリグサ、サラセニア)などがある。
【まとめ】
<茎や枝が変形のトゲ>
サイカチ・ハリエニシダ・クスドイゲ・ナワシログミ・ジャケツイバラ・カンコノマ
<表皮が変形したトゲ>
ノイバラ・サンショウ・イヌザンショウ・カラスザンショウ・ハリギリ・サルトリイバラ・ママコノシリヌグイ
<葉が変形したトゲ>
サボテン・カラタチ・ハリエンジュ(托葉変形)・メギ(葉と托葉)
<葉柄の変形したトゲ>
スグリ・ウコギ ・
葉の鋸歯がトゲ・・・ヒイラギ・メギ
<葉針といわれるトゲ>
針葉樹のマツ・カヤ
コルク形成層がトゲ・・タラノキ
<総包片が針状に変形>
クリのいが ・草本のトゲ・・アザミ類
4.いくつかの事例ついて #
森林の植物は、動物の食物資源として連鎖の中にありますが、死滅するほど食べ尽くされないように防御の体制を備えています。それは物理的、化学的な防衛体制であったり、被食耐性であったり、いろんな進化を辿ってきたのです。
A)哺乳類の発生より遡ること、古生代・石炭紀の約3億数千万年前に昆虫類が発達した変遷からみて、最初の被食者は昆虫であったと考えられます。コバノカマズミの葉が、ニホンジカの採食により硬くなり、昆虫による食害が減少した報告事例があります。
B)ササ類は地下の根茎を発達させることにより、引き抜かれにくくなっており、地上部のササが採食されても、地下に養分の貯蔵がしっかり確保されているのです。
C)イネ科植物は、成長点が地際にあるので採食に強いといわれています。シバ・ササなど。
D)金華山島はニホンジカの生息地。ダキバヒメアザミのトゲがシカの生息しない地域のトゲに比べて非常に鋭くなっている。またカンコノキでは採食部位のトゲ密度が高くなる。
E)ヤマノイモ属の植物は、動物が簡単に掘り取りできないように、地下深くに芋をつけるものが多いが、浅いところに芋をつける種は、たいてい有毒成分をもつ。
F)トゲ植物の多くは落葉性であること、熱帯や亜熱帯を原産地とすることなどからみて、乾燥防止のためにできるだけ葉の数を減らしたのではないか、とする説も考えられます。
最後に、植物毎のトゲの被食者、即ち進化的背景は不明なことが多いとする現段階の研究域からみて、先生方の今後の研究に大いに期待してやみません。
【 参考文献:
植物の世界・高槻成紀著・朝日新聞社 :日本林業樹木図鑑・株式会社地球社 :獣たちの森・大井徹著・東海大学出版会 :毒草大百科・奥井真司著・データハウス株