四つ葉のクロバーの本当の意味は、十字架に関係
今回は新帰化植物の中からクロバーやカタバミなどを掲げ、類似点や特徴などの探究が課題です。黄色や赤紫色の花は見分けの1つですが、ハート型の葉っぱもそれぞれ特徴を現しています。また、四つ葉は「幸運を招く」お宝として、国民的な人気者です。
1.シロツメクサ・アカツメクサ(ムラサキツメクサ)の対比 #
マメ科・シャジクソウ属は約250種が、世界の温帯から亜熱帯に分布している。クローバーは、シロツメクサなどシャジクソウ属植物の総称です。茎葉が栄養豊富であるため世界各地で牧草として栽培されてきました。
1) ヨーロッパ原産のクローバーが日本にやってきたのは、江戸時代にオランダからの輸入品を保護するために、乾燥した草を詰め込んでいたらしい。ツメクサの和名の由来は「詰め草」にある。
2) ヨーロッパではクローバーの3小葉が、キリスト教の三位一体のシンボルとされてきた。 とくに、四つ葉は十字架に見立てられ、幸運の護符として大切にされてきた。
3) クローバーは群落で育つのが普通。いたるところで目にするが、真ん中の個体は、日当たりを求めて周囲より背が高くなっている。
4) 仲間が多いことは、「栄養や太陽光」をお互いが求め合い、 生存競争が激しく、日当たりを獲得するために、周囲よりすこしでも高くなろうとする生き様である。
5) シロツメクサ(左)・アカツメクサ(右)の対比・・多年草
花期は春~夏・球形花序は共通。花柄は長く花色は白色。右は淡紅色・花柄は短いので葉に埋まる。 茎は地上を這って不定根を出す。右は全株に毛あり、茎は直立する。 葉の先は少し凹むか丸く微細な鋸歯縁。右は葉の先が尾状に細く波形鋸歯縁。 花後は下向きに垂れる。右は花茎が短いので花後も下向きにならない。
2.欧州原産のウマゴヤシとコメツブウマゴヤシとの対比 #
ツメクサによく似た仲間に「ウマゴヤシとカタバミ」がある。花を見れば間違うことはないとおっしゃる御仁も、葉で見分けるとなると「難題」につきあたる。
1) ムラサキウマゴヤシ・ウマゴヤシ・コメツブウマゴヤシなどは、マメ科・ウマゴヤシ属の帰化植物。原産地はペルシャ地域。以降ヨーロッパ各地に広まって主要な飼料作物に利用。
2) ウマゴヤシ類の総称としての「アルファルファ・alfalfa」は、もとはペルシヤ語の「最 良の草」という意味の言葉が、アラビヤ語に転訛してできたといわれる。
3) キリスト誕生の折り、生まれたばかりのキリストが寝かされていた飼葉桶に敷き詰められていた干し草の大部分は、ムラサキウマゴヤシだといわれている。
4) ウマゴヤシ(左)・コメツブウマゴヤシ(右)の対比
花期は3~5月・5㎜ほどの黄色小花。右は5~7月・3㎜ほどの黄色小花。
茎は伏せるか斜めに立つ・無毛。右は疎毛で伏せるか斜めに立つ。
葉の先は少し凹み斑紋なし・托葉は深裂・3小葉。右は細かい鋸歯縁・托葉は鋸歯縁を欠くのが多い・3小葉。
果実は扁球型で硬い芒状刺あり。右は腎臓型で刺なし・表面に隆起線
3.カタバミ(自生)とムラサキカタバミ(南米原産)の対比 #
カタバミは、道端や畑地などで普通に見られる人里植物の右代表的な存在感がある。3出複葉、花は黄色、茎葉は地上を這って、よく分枝して広がり、ほふく茎と種子の両方で繁殖力は旺盛。 あやかって、南北時代から武家の家紋に使われるようになった。長宗我部氏や姫路藩主酒井家の家紋は有名。
(1) カタバミ科は、8属約930種が熱帯から北半球に分布。大部分が草本。まれに「ゴレンシ・液果」のような美味しい果物の木本も仲間である。花は両性、離弁花で放射相称、萼片も花弁も5枚ずつ。
(2) 日本にはカタバミ属の8種だけが自生する。カタバミ・ミヤマカタバミなどは国産。片やムラサキカタバミ・イモカタバミ・ハナカタバミ・オッタチカタバミなどは帰化植物。外来種は地際から茎葉が生えるので、ここが見分けのポイント。
(3) ハート型の3枚の小葉が特徴。何とも優雅な葉っぱである。自生のカタバミの葉は小さくて、青葉から茶色と変色が多い。花は黄色、葉腋に1個ずつ花茎を伸ばし、春~秋まで咲く。カタバミは朔果で鞘が熟すと破れて種子をはじき飛ばす。
(4) カタバミの花は黄色、葯は白色で花粉なし、ムラサキカタバミの花は紅紫色で美しく、鱗茎を沢山つくつて増える。ラッキョのように鱗片が重なってできるのが鱗茎。
(5) カタバミ(別名・すいものぐさ)はシジミチョウの食草。葉は酸っぱい味のするシュウ酸を含む。学名の「オキザリス・oxalis」はギリシャ語の「酸っぱい」に因む。
(6) カタバミの葉は夜は休んでいる。「朝に開き、夜に閉じる」という睡眠運動を繰り返す。ネムノキ・インゲンマメ・クローバーなども同じ動きをする。
4.類似の北米原産オッタチカタバミの特徴 #
町内の道脇や庭先でよく発見できるほど勢力範囲を広げている。帆柱山系では目にかからないが、早晩侵入するのも時間の問題。
今までのカタバミとは違った様子にあるので見分けやすい。地上を這うように伸びる茎が立ち上がることからオッタチという。
1) 光を求めて茎が立ち上がるオッタチカタバミは、茎の節々から長い葉柄を互生にのばす。3小葉はハート型で先の切れ込みが浅い
2) 茎は太めで細毛が密生。先端に1㎝ほどの黄色の5弁花をつける。蕾の時は下向きで、開花すると上を向き、果実になると直立し、鞘が弾けて種を飛ばす。
3) オッタチはタチカタバミの別名ともいう。オッタチの名称は、別にオッタチカンギク【乙立寒菊・島根県出雲市で発見】がある。
4) 仲間が多いことは、「栄養や太陽光」をお互いが求め合い、 生存競争が激しく、日当たりを獲得するために、周囲よりすこしでも高くなろうとする生き様である。
注:本件資料は、NPO帆柱自然公園愛護会の会員研修用にまとめたものです。作成に当たり下記の引用・参考文献を有効に活用させていただきました。
【引用参考文献】
・ 牧野日本植物図鑑 北隆館刊/牧野富太郎著
・ 植物の世界 朝日新聞社刊/根本智行・清水建美著
・ 原色日本帰化植物図鑑 保育社刊/長田武正著
・ 野に咲く花 山と渓谷社刊/林 弥栄監修
・ 雑草博士入門 全国農村教育協会刊/岩瀬徹・川名興著