海抜622mの皿倉山は、眺望の良さは抜群の頂を誇り、近隣の山頂とは比類無き景観地であることから、新日本三大夜景の名所に数えられています。他の箇所は「山梨県の笛吹川フルーツ公園・奈良県の若草山」となっています。
(別途の三大夜景は、北海道の函館山・神戸の六甲山・長崎の稲佐山の3箇所です。)
さて今回の課題は、今までの植物談義とは少しだけ内容が異なりますが、皿倉山の山頂から遠望できる箇所を辿ることと、視界の限界や、「地球は丸い」ことからいろんな問題が生活に密着しているのです。
1.地球の正しい形は回転楕円体・・? #
地球は近似的には球形の固体です。全周は40,000㎞、直径=12,742㎞・平均半径=6,371㎞です。極半径=6,356㎞・赤道半径=6,378㎞の平均値で表します。
月の大きさは、直径=3,476.0㎞・半径=1,738㎞で、地球から月までの384,400㎞です。この距離を光の速度で飛行しても約1.3秒かかります。
ア・球形なるが故に地平線・水平線がある
海岸の波打ち際から沖合を眺めたとき、はるか彼方に水平線が映ります。この時の距離は、目の高さの平方根に比例します。 (比例定数は3.6・・または視界良好の際は3.9)
例1・目の高さ1mで海抜0mの場合、3.6㎞先が地平線(水平線)です。100mの頂上からは10倍の距離の約36㎞先が地平線(水平線)になります。
例2・皿倉山(622m)の頂上からの視界は、約90㎞(叉は97㎞)先の地平線(水平線)まで見えることになります。逆に途中に全く障害物がなければ海抜0mの地点から約90~97㎞先の皿倉山頂が見えるのも当然ですが、大気の汚染によって難しいかも・・。
例3・眺望の善し悪しは、空気が澄んでいるかどうかにかかっています。皿倉山頂は四方の観測が可能であり好適地です。視界が良好であれば約97㎞先の地平線が確認できることになります。
月に着陸したアポロ8号から 地球を写す
(ジャポニカ百科事典より)
彼方の地球ではアフリカ大陸が昼夜の境目にある
地球までの距離は384千㎞
地球の直径は12,742㎞
イ・主要な山頂までの距離は何㎞ですか・・?
皿倉山頂からの視界の限界は約90~97㎞であることから、この範囲の主要地点を計算したところ、沖の島(78㎞)・前原市野北山(64㎞)・福智山(11㎞)・英彦山(42㎞)・由布岳(83㎞)・久住山(94㎞)などです。久住山はまだ確認していません。以上は各山の一等三角点の経度緯度と皿倉山の経度緯度から逆トラバース計算した値です。
久住山(1787m)は皿倉山からの視界の中では、犬ケ岳(1131m)の後方に所在していてほぼ直線上にあります。計算上は久住山頂の一部分の「約400m弱」が見えるはずなのですが・・。
実際は犬ケ岳が久住山の手前に聳えているために、絶好の晴天でない限り見えずらいのです。ぜひとも確認したい眺望です。
2.皿倉山頂の緯度・経度は・、地球の反対側の国はどこでしょうか・? #
皿倉山は北緯33度50分32秒、東経130度47分50秒です。ということで所在地を座標値で表すことができます。この座標値は地球上の一点を示すものです。
経度は布地のタテ糸を、緯度はヨコ糸だとすると、タテとヨコの各糸の交点が座標値であり、経度を東経、緯度を北緯といいます。
ア・地球は1秒間に463mの速さで自転する
地球の自転は24時間で360度=1回転します。1時間に15度回転(360÷24=15)するのですが、経度が15度ずれる毎に東側は1時間早くなり、西側は1時間遅くなります。
日本の標準時は東経135度を明治19年に勅令にて定めています。東経135度に位置する関係自治体は、淡路町・明石市・神戸市・三木市・西脇市・山南町・京丹後市などです。
皿倉山は東経・約131度ですから西側に4度ずれており、正確には16分遅れの時差があります。しかし、小面積の日本国内では時差の制定はありません。
米国は広大な国です。従って本土だけで「東部・中部・中西部・西部」の4つの標準時があり、隔地のアラスカ・ハワイの2つの標準時を加えて、6地区で時差を設定しています。
イ・ 皿倉山の裏側は何という国だろう・・?
皿倉山の位置からみて地球上の真裏の反対側は、座標値で示すと北緯33度50分32秒、西経45度47分50秒です。東経が西経に変わりますが、さて何という国でしょうか。
残念ながらこの位置をたどると、「大西洋のど真ん中」で陸地ではありません。北米のアトランタとモロッコのカサブランカを結んだ中央が皿倉山の裏側になります。
*ちなみに東西南北の方向に進路をとった場合の最初の外国は次のとおりです。
東方新北九空港の北端を目印・・・アメリカ合衆国のロサンゼルス付近
南方福知山を目印・・・インドネシアのニューギニア島のソロン付近
西方孔大寺山を目印・・・中華人民共和国中国の上海と青島の中間点付近
北方白州灯台を目印・・・ロシア連邦のウラジオストク付近
3.なぜ日付変更線が必要なのか・・? #
日本の標準時は東経135度ですが、世界の標準時は経度=0度の所になります。地球の自転は1時間で15度回転することになるので、東経135度は9時間早いのです。
と言うことは、東回りに一周すれば24時間経過して次の日になってしまいます。反対に西回りに一周すると前の日の同時刻になってしまいます。これは大変な不都合です。
そこで、東経180度(西経180度)に沿って日付変更線を設定。西から東に行くときは 日にちを一日戻し、東から西に行くときは一日すすめることで、正常に戻るのです。
経度は「英国のグリニッジ天文台を通過する子午線」を基準としていますが、緯度は赤道を0度として南北両極へ90度ずつ測っていきます。
イギリスは日本より西側に135度離れていることから9時間遅れということになります。日本の正午0時のとき英国は午前3時です。
4.子午線とは・?、日本古来の方位は十二支で表していた #
「子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥」の12支を使って古代中国では方位を表していました。北の子と南の午を結ぶ線が子午線で、直角に交わる線の両端が東と西を表し、さらに二等分することで北東・南東・南西・などと細分していました。
これらの方位に対して特別な意義を与える思想が中国におこり、日本にも伝えられて俗信となり、生活の中に長年とけ込んでいました。新築や転居や旅行などの行く先を確かめる風習は今でも残っています。
方位の吉兆は、鬼門は固定的で「うしとら・北東」の方角が凶となり、吉とする方角は「恵方=えほう」といい、今年は「西南西」ですが、毎年変わります。
「西南西」に向かって、恵方巻き(巻き寿司・1本)を食すると縁起がいい、という風習が流行のようになっています。
(文責:田代 誠一)
【参考引用文献】
・ジヤポニカ大日本百科事典・小学館 他