太田道灌もしらなかった?!
七重八重 花は咲けども ヤマブキの 実の(蓑)一つだに なきぞあやしき(悲しき)
この歌は醍醐天皇の皇子、兼明親王が詠まれたのですが、道灌は遠乗りの折り、にわか雨に遭遇し農家に立ち寄り「蓑」を借りたいと所望したが、対応した少女は「山吹の一枝」を差し出した、という故事はとても有名です。
醍醐天皇親政は今から約1100年前。その頃から実のできない八重咲きヤマブキが自生していたことになる。この歌の意味が理解できなかった道灌は、己の不明を恥じて歌道に精進したことなど・・・
感嘆することは多いが、問題は八重咲きにはなぜ種子ができないかである。種子植物の開花は約20万種とも言われるが雄しべ雌しべの花粉交配による種子形成は全部ではない。
植物分類のヤマブキについて・・・ #
ヤマブキは、バラ科の植物で一属一種で日本と中国に自生する。落葉低木・葉は互生・単葉・卵形で重鋸歯・当年枝の先に花を一つつける。花弁は5枚で黄金色(俗称:山吹色)
ヤマブキの開花はサクラにやや遅れて、桜前線を追いかけるように日本列島を北上する。冬でも緑色をしている茎が観賞され、西欧や北米でも人気があります。ヤエヤマブキ、シロバナヤマブキ、キクザキヤマブキなどの品種があります。
八重咲きには実がない、なぜ? #
雄しべ、雌しべに異常があるから種子ができない
三倍体植物は自然のままでも生じるし、人工的に化学処理をすることで三倍体を作ることもできます。三倍体の花は器官の「がく・花弁・雄しべ・雌しべ」に変異が起きます。花の器官の内、「がく・花弁」のもとは「葉」であることは明らかですが、「雌しべ」も元を探求すると「葉」にたどりつきます。
問題の三倍体植物は、生殖器官に異常が発生し通常のように交配ができない花構造ができてしまうことにあります。特に八重咲き種では「雄しべ」に異変が起こっているのです。
八重咲き花は、ツバキ・サザンカ・バラ・ヤマブキ・ムクゲ・タチアオイ・サクラ・ボタン・シャクヤク・チューリップ・スイセン・ストックなどです。
完全な八重咲きには雄しべはまったくありません。不完全な八重咲きは雄しべが少なくなるばかりではなく、時として花弁になりかかったものがあります。
つまり、突然変異によってできた植物(ここでは八重咲き)は雄しべが存在しないため受粉できず、花は咲くが実(種子)ができないのです。
花弁5枚・真ん中に 雌しべ・周辺に多数の雄しべ
一重咲き
花弁の一枚一枚の 付け根が糸状に細 くなっている。花弁は内側ほど小さくなっている。雄しべは見当たらない。
八重咲き