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森 の 不 思 議    第9話
 
   
 1.日本列島の森林帯とは・・・?
   九州は暖温帯気候・森林地帯は照葉樹林帯

 

 日本列島の大部分は、世界的にもまれな温暖で湿潤な気候環境に恵まれているため、ほとんどが森林で覆われている。(国土面積の64%が森林・世界規模では30%が森林)

 

 日本列島は南西から北東に細長く伸びている島国である。南と北では緯度にして約22度の差があるため、亜熱帯気候から亜寒帯気候に属する地域までが含まれている。(北海道の北方で45度〜沖縄の南方で23度)                           

 関東地方から北海道にかけての北日本側は、寒冷気候のため落葉性のコナラやミズナラを中心にした夏緑林(落葉性広葉樹林)が発達している。

 

 また、本州中部以西(長野県付近)の南西日本は、温暖な気候のため常緑樹のシイ類、カシ類とクスノキ科を主体とした亜熱帯や暖温帯の常緑広葉樹林(照葉樹林)が極相林となっている。

 

 日本の森林帯は、本多博士の寒帯林〜温帯林〜暖帯林の3区分から、森林帯を7地帯に区分けする説まであって、ここでは亜寒帯林〜冷温帯林〜暖温帯林〜亜熱帯林の4区分を採用。

 

  亜熱帯林 〜 沖縄県 → マングローブ・ガジュマル・アコウ・イタジイなどの常緑広葉樹林帯
  暖御帯林 〜 関東南部から九州 → カシ・シイ・クス・タブなどの常緑広葉樹林帯(照葉樹林)
  冷温帯林 〜 関東北部から北海道南部 → ブナ・ミズナラ・カエデ等の落葉広葉樹林帯(夏緑林)
  亜寒帯林 〜 北海道の北部と高山 → モミ属・トウヒ属などの常緑針葉樹林帯

 
   
 2.帆柱山系の落葉樹と常緑樹はどっちが先住者か・?

 

  帆柱山系の森林帯は常緑広葉樹林帯に属しており、構成樹種から照葉樹林とも呼んでいます。 
 
  なのに、森林の一部では常緑樹と落葉樹の混交林が目立つし、また、常緑樹の勢力下に落葉広葉樹がポツポツと点在する状況から、不思議な勢力関係が見え隠れしています。どんな理由があるのでしょうか..?

帆柱山頂付近の照葉樹林

 

 不思議な植物界の現象ですが、落葉性と常緑性の両者の言い分を聞いてみましょう。そこに解決の鍵がありそうな気がするんです..?

>常さん 常緑樹の勢力下にどうして落葉樹が生えているのかな..?今は常緑樹だけど、昔は落葉樹であったかも..? 皿倉山ではどっちが先に住み着いたのだろうか?』

>落さん 『難しい問いだね。私の先祖の言い伝えでは落葉樹だそうだよ。地球上に初めて森林が茂ったときの樹木は落葉性だったというじゃないの..。』

 

>常さん 先祖の話になると納得できないんだよ。僕んちの先祖は、常緑樹が先だと言ってたよ。地球上の気象変動は、寒気〜暖気〜冷気と度々大きく変わっているしね。』

>落さん 『皿倉山の北西斜面には、落葉性の樹木集団があることを知らない人が多いんだよ。なぜこの範囲だけが、そうなったんだろうね..。先祖のルーツを知りたいね。』

 

★大変な主張ですが、進化の過程をふくめて諸説の概略をまとめてみました。

 

★日本列島の形成前や形成後の植生、気候の温暖化や寒冷化並びに氷期の繰り返し、など陸上の植物にとっては激動の中を絶滅したり、生き残ったりで、先祖のルーツは歴史の変遷の中に証拠があります。それは常緑樹が先駆者の時代もあれば、落葉樹が先駆けた時代もあるということです。以下の2例は参考資料。

 

・白亜紀(1億4500万年〜6500万年前)・温暖な気候・常緑針葉樹林が主体・被子植物の進出・後期には常緑広葉樹が主となり常緑針葉樹と混生

 

・第三紀始新世(5500万年〜3800万年前)の後半・地球規模で寒冷化・北極圏周辺に亜寒帯性針葉樹林が成立

 

・夏緑林が南下し分布域拡大

 
   
 3.常緑樹と落葉樹の葉のちがい
   耐久構造が長期か、短期か

 

>常さん 落さんはいいなぁ。毎年春には新緑の喜びを、秋には紅葉の楽しみを人々に与えることができるのだから..。』
   
>落さん 常さんだって、一年をとおして緑がイッパイでうらやましいよ。落葉の性質も悪くはないんだけども、毎年付け替えるエネルギーは大変だよ。』

 

皿倉山北西斜面の混交林

>常さん 『僕だって2〜3年おきに落葉し、新葉を付け替えてはいるんだけど、その間はずっと二酸化炭素を吸収し、光合成の働きを止めるわけにはいかんのだよ。』

>落さん 時には休みたいだろうね。だけど僕らより常さん達のお陰で大気の浄化が進んでいることを感謝しているよ。何たって落葉樹の葉は、耐久性がないんだから..。』

 

以下については、菊沢喜八郎著・落葉性とその由来(植物の世界・朝日百科)から一部抜粋したものです。

 

★夏緑性の樹木は、夏季には光合成が最も活発で多くの葉をつけている。秋季から冬季にかけて温度が下がり光合成の能力が低下すると落葉する。温度を体感する性質をもっていると考えられるが、不思議なことがいくつかある。

 

>A 森林帯の区分から判断して、寒い北方に行くほど落葉性樹種の種数、森林の中に占める落葉性の種の比率は増えるのが当然のようであるが、実はそうとはならない。

 常緑性の比率は熱帯多雨林と北方針葉樹林で高く見られるように、低緯度地帯と高緯度地帯で多く、落葉性は中緯度地帯で多いという傾向がある。これは温度だけで説明できない不思議な現象である。

 

>B 同一地域なのに必ず常緑性と落葉性の混生が見られることである。落葉性高木の下に常緑性の低木が林床に混じっている。また同じ気候の地域内に落葉性と常緑性の高木も混じっている。この事実は両者の性質が寒暖の気象条件だけで一方的に決められているのではないらしいことを暗示している。

 

  樹木の葉は、光合成生産量を高める上で機能発揮が高ければそのまま維持し、機能の低下がみられれば落葉し、次の開葉を図る性質を備え持つといえます。丈夫な葉と薄めの葉では、耐用に時間差が生じるのは当然です。

 
   
   
【 参考文献:生物の進化と多様性・岩槻邦男著 : 樹木社会学・渡邊定元著 : 森林の生態・菊沢喜八郎著 : 植物の世界・菊沢喜八郎著 : 日本の森林植生・山中二男著 : 他  】 
 
   
 
   
   
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