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森 の 不 思 議    第6話

「樹木同士がくっつく珍奇な現象を観察」

 

 秋の彼岸が近づく頃、必ずヒガンバナの花が咲きます。葉と花は別々の時期に活動するためにお互いを見つめ合う時間帯はないのです。不思議な花ですねェ。また花は咲けども実はつかない・・・どうして子孫を残すのか・・など特異な形態をもっています。

 ヒガンバナの不思議さを横目に見ながら、今回は樹木同士のドッキング現象が課題です。
皿倉山登山歩道の沿線には数多くのヤブツバキが繁っていますが、この中の2本がいつの間かくっついてしまったのだから不思議です。自然界ではいろんなことが起きるのですねェ。  

 

  はたまた・・・権現山の周回道路の脇には、珍奇という言葉がぴったりの「ウリハダカエデ」を観察することができます。「この木、どうなっているの・・・」と感嘆の第一声を発しない方がおかしいのです。本当に不思議な現象にはビックリさせられます。

 今回は樹木同士の合体現象に端を発して、植物のもつ特異な性質の中から「分化全能性」と「重力屈性」を持つが故におこる現象について、少し探究してみたいと思います。

 

 
   
 1.植物の特異な性質・分化全能性について

 

 動物との違いは「植物は生涯不動、根系・幹・枝、葉の少数器官巨大成長、長く生き続ける、栄養繁殖が可能」などをあげることができます。その中で「生殖によることなしで栄養繁殖が可能」であることの特質こそ「分化全能性」にあたります。  
  植物は体の一部か、わずか1個の細胞からでも、完全な植物体を再生する能力があります。動物の細胞は1個だけでは何もできないのです。

 

あ) 分化全能性の性質を利用して「挿し木・接ぎ木」などの技術が発達


い) 個体数を増やすためには、昔からの「挿し木・接ぎ木」の技術を利用


う) 組織培養の方法でもなく、古くからの技術なので、バイオテクノロジーとはいわない。

    苗木作りには最適な方法。遺伝的にはまったく同じ性質の子孫が生まれます。

 

  【挿し木について】
 

 スギの苗木作り、キク・バラ・ツツジ・アジサイなどは、挿し木で増やしやすい植物です。スギ林の大半は「挿し木」で増やした個体群の現れです。


 種子から育てた苗を実生苗と言いますが、ヒノキ林は実生苗による森林ばかりです。マツも種子から育つのです。
分化全能性を持つ植物といえども、ヒノキやマツの挿し木は困難なのです。

え) 「挿し木」は植物の枝や茎を切り取り、砂や土に挿しておくと、やがて根が生え、成長がはじまり、1個の植物体らしくなってきます。

 

お) 「挿し木」は発根の状況や成長の様子を見極めて、山地や庭園や植木鉢に移植するのが普通です。
   
か) 皿倉山のスギ林は、ほとんどが挿し木による人工林です。種子から育てた実生のスギノキは点在する程度です。個体毎に挿し木であるか、実生であるかは現地で観察してください。

 

  【接ぎ木について】
 

 「接ぎ木」の方法は同一の種類であれば意外と簡単に接ぐことができます。同じ属の仲間や、同じ科の植物であれば接ぐことはできますが、中には難しく容易でないものもあります。

 皿倉山の歩道脇のヤブツバキの2本が、大木でありながら偶然にも 「接ぎ木」と同じ要領で、くっついてしまったのです。この現象が自然の中で起こったことにビックリなのです。
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き) 最近は園芸店の店先に、接ぎ木による野菜の苗をよく見かけます。普通の苗に比べて少し値段は高くなっています。菜園での連作を避ける場合には有効な手法です。

 

く) 「接ぎ木」は病気に強く、連作ができる品種を台木にして苗を育てます。但し、病気に強いからといって、面倒見を怠れば何にもなりません。野菜作りは難しいのです。

け) スイカの台木は、ウリ科のユウガオやカボチャを使っています。キュウリもカボチャを台木とし、ナスビは赤ナスを台木に使用。
 
   
 2.植物の屈地性(重力屈性)とは・・

 

    分化全能性の特徴を活かした技術が「挿し木・接ぎ木」であることを述べてきたのですが、皿倉山には分化全能性と重力屈性の両方の特性を観察できる「ウリハダカエデ」が目前に繁っているのです。これはヤブツバキの比ではありません。

 

 写真を見ただけでも不思議だと思いませんか
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 二つと無い貴重な樹木であり、国内のあちこちで観察できるような代物ではないのです。

A) 植物の成長運動は重力に対して反応する屈地性(重力屈性 )を持っています。根は地中(重力の方向)に向かうので正の屈地性、茎は重力とは反対の方向に向かうので負の屈地性呼んでいます。葉が光を受けやすい方向に曲がって成長していくのは屈光性という成長運動です。

B) いつ頃かわからないのですが、枝の細胞の一部に突然変異が発生。それは根の性質をもつがために、正の屈地性を現し、下方に向かって伸びていったと推定できます。 普通は屈地性(重力屈性)の特性は、地中にあって見ることは難しいのですが、ここでは露出しているのです。

 

 

C) 若木の頃は、親木から枝部分をとおり「水分・養分」の吸収を受けていたのですが、正の屈地性部分の成長によって、親木との連結からの通道は二次的な働きにダウンしてしまい、専ら支持機能として働いているのではないでしょうか・・?

D) 根の部分の重力屈性は明らかに観察できますが、親木と枝の分岐点は特異な膨らみとなっており、いかにも分化全能性の表れのように見えますが、如何でしょうか・・?

 

 
   
   

【 参考文献:

植物の世界・朝日新聞社:植物の体制・井上 浩著:生態学・藤井宏一著など

 
   
 
   
   
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