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森 の 不 思 議    第39話

葉の呼吸こそ大気浄化の最先端です
「植物の優れた機能には動物界もおよばない」

 

 動物界にはないが、植物界にはある「分化全能性」と「光合成」の一大特徴の内、京都大学の山中伸弥教授らのグループによって、「人工多能生幹細胞」の「マウスによる i P S 細胞」の研究が進展し、本年のノーベル医学生理学賞を受賞。

 

 「分化全能性」の一郭が「i P S 細胞」によって壊れそうになりつつある。また、昨年のノーベル化学賞を受賞した根岸英一教授らは、人工光合成の推進のため国家的支援を求めた経緯があり、植物特有の2つの特性が「人工的創作」によって人類に貢献する日が近づきつつあるのです。

 

 今日までどんなに科学が進歩しても、葉っぱ1枚の構造や機能を人工的に創れないのは、それだけ複雑であり、微細であり、時計の秒針の如く正確でかつ微妙であることなど、「神わざ」としか言いようがないほど「すぐれもの」だからです。 

 

 今回はこの中の「光合成」の工場である「葉っぱの働き」が課題です。人間が創ることができない「工場」の構造や機能の中から、先ずは「気孔の開閉」と「二酸化炭素の吸収」という表面的な動きからスタートです。

            

 
   
 1.科学が進歩しても光合成の機能は人工的にはつくれない

 

 動物と本質的に異なる点は、植物は「光合成」による「葉緑体」を細胞中に持つことです。そこで光合成を行う最先端は一枚一枚の「葉」であり、二酸化炭素(CO2)の吸入口となるのは「気孔」といいます。  


◆ 身近に観察できる「葉の気孔」は植物の種類ごとに「表・裏」に分布しています。・・・「葉っぱの表や裏には穴がいっぱい・・別表参照」 

 

別表・・気孔の分布        
       (1mm平方当たり) 
    電子顕微鏡の気孔         照葉樹の森     

 

◆ 気孔は肉眼では見えない。電子顕微鏡で見るとよく判ります。「呼吸の口・気孔」へ向かって二酸化炭素は流れ込み、酸素を放出しています。
◆ 植物の呼吸は楽なようですが、実はたいへんデリケートなのです・・・
 植物が生活していく上で、二酸化炭素はなるべく高い濃度で使いたいのですが、一方水分は失いたくないというジレンマがつきまとっています、開閉のバランスが重要なのです。

◆ 大気中の二酸化炭素は濃度の低い気孔の中に向かって自然に流れ込むというのが普通であって、吸収する力は気孔にはないのです。
◆ 従って、緑の植物が多いほど酸素の排出も増えるとともに、二酸化炭素の流れ込みも盛んになるのですが、世界の二酸化炭素の排出量は戦後4倍、先進国が全体の6割を占める状況にあり、地球環境は劣悪化が進んでいるのです。(キーリング曲線を参照)

◆ 光合成の結果、植物体1kgを作るために、炭酸ガスを約1.6kgを吸収し、酸素約1,2kgを放出、木材の幹は炭素の塊なのです。
◆ 森林の成長は、ヘクタール当たり年・炭酸ガスを15〜30屯吸収し、酸素11〜23屯を放出。
 1ヘクタールの森林で約40〜80人が呼吸に必要とする酸素を供給しているといわれています。 

 

 森林の二酸化炭素吸収量 キーリング曲線  
   
 ※ハワイのマウナーロア火山の大気中の炭酸ガスデータ
(小さいグラフは1年間の量の変化)
( 画像をクリックすると拡大画像で表示されます )  
 
   
 2.植物と動物のちがいは・
 「光合成と葉緑素」・「いろいろな繁殖方法」・「巨大で長生き」など・・・

 

 植物の最大の特徴は光合成によって独立栄養生活を営むことです。緑の色素であるクロロフィルが光のエネルギーをとらえ、有機化合物を合成することにあります。地球上の動物・菌類・細菌などの従属栄養生物はすべて植物が合成した有機化合物に依存して生きているのです。


 地球上の生物の生存にとって植物が不可欠であるもう一つの理由は、植物による酸素の供給です。あらゆる生物は呼吸のために分子状の酸素を必要とします。この酸素は植物の光合成によって生じたものに他ならないのです。

     
ヤマボウシ  アケビ オオシマザクラ 

◆ 植物は動物に食べられる運命にあります。植物は60億の人間を含む動物界を養っていると言っても過言ではありません。反面、植物はいろいろと動物を利用しています。 
◆ 種子散布や花粉交配のために昆虫や鳥の媒介によって繁殖をおこなうなど、共存共栄の関係にあります。

◆ また、動き、感覚、捕食、排泄などの有無の違いがみられますが、本質的な違いは光合成による葉緑体を細胞中に持った生物が植物なのです。
◆ 他にも次のような違いがあります。植物はふつう、動物のように有機物を必要としません。太陽光と二酸化炭素と水とアンモニア、リン酸などの若干の無機イオンがあればよいのです。これを独立栄養生活といいます。

◆ つまり、植物は食べ物の中に住んでいるわけで(永年固着性)、動物のように食べ物を求めて移動する必要がないことから、認識・識別の感覚器官はありません。
◆ その理由は、食べ物との距離にあるといわれています。植物の光独立栄養に由来しているのです。
◆ 細胞分裂の観点からの違いは、先端の細胞は常に新しく、分裂能力を持っていることです。さらに、葉緑体・細胞壁に次いで特徴づけるのに、液胞があります。
                                                (文責 : 田代 誠一)

 

 注:本件資料は、NPO帆柱自然公園愛護会の会員研修用にまとめたものです。作成にあたり、下記の引用・参考文献を有効に活用させていただきました。
 【引用・参考文献】 樹木社会学・東京大学出版会刊・渡邊定元 著
             植物生理学・放送大学教育振興会刊・増田芳雄、菊山宗弘 著
             生物の進化と多様性・同上・森脇和郎、岩槻邦男 著
             植物の世界・朝日新聞社刊・古川昭雄、寺島一郎 著
 
 

【参考資料】・・よくわかる地球温暖化問題 改訂版・中央法規出版KK 

● オゾン層
成層圏(高度10〜50km)のオゾンの多い層をいう。オゾン層の厚みは30〜40kmにわたっている。しかし、地表付近で1気圧の条件下に引きなおせば3ミリほどの希薄な層でしかない。 

 
成層圏オゾンは太陽光に含まれる有害な紫外線の大部分を吸収して地上の生態系を保護している。近年、フロンの大気中への放出の増加に伴い、オゾン層の破壊がすすみ南半球では皮膚ガンや白内障などの人体への影響が深刻になっている。


● オゾンホール
成層圏のオゾンの濃度が著しく減り、穴の開いたようになっている部分、フロンなどから遊離した塩素や臭素が成層圏に達してオゾン層破壊が急速に進むことが原因。

これまで排出されたフロンの影響でオゾン層が回復するには2020年頃まで始まらず、完全に回復されるのは2050年頃になると予測されている。 


● 温室効果ガス  greenhouse gases:GHGs は6種類
地球を暖める温室効果の性質を持つ気体(ガス)。水蒸気(N2O)・二酸化炭素(CO2)が代表的で、メタン(CH4)・一酸化二窒素(N2O)などが人間活動の影響で近年増加し、産業革命前のCO2は280ppmvであったのが370ppmvと約3割増加している。


京都議定書ではCO2・CH4・N2O・HFC・PFC・SF6の6種類の気体が対象になっている。
*HFC=炭素、フッ素、水素からなるハイドロオロカーボン *PFC=炭素とフッ素からなるパーフルオロカーボン  *SF6=硫黄とフッ素からなる六フッ化硫黄  

 
   
 
   
   
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