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森 の 不 思 議    第31話

「アカメガシワは自然繁殖の先駆者です」
帆柱山系の森林の一部は、パイオニア種の活躍の場です

 

 手近にあって普通に観察できる樹種です。伐採跡地や道路建設などで林地が露出したところに一番最初に生えてくるのが「アカメガシワ・ヌルデ」などの先駆け樹種です。

 

  パイオニアと一口にいったものの、他に先駆ける勇気は大変なものだろうと推察。人間だって先頭をきって突き進む決断力は勇気そのものだと思いませんか。

 

 今回はアカメガシワの不思議な生活様式について、少し探求してみたいと思っています。
何が、どのように、不思議であるのか、そのいくつかを挙げてみました。

 

 ▲種子は数時間高温にさらされると、発芽態勢ができるのは何故か(発芽のメカニズム)
 ▲春先の芽立ちの新葉は紅色を帯びているのは何故か

 ▲トウダイグサ科に所属する「分類学」はどうなっているの  などです。

 

 
   

 1.トウダイグサ科・アカメガシワ属・アカメガシワ

 (Mallotus japonicus Muell.Arg.・・長軟毛ある足・日本産の)


  牧野植物図鑑によると、コミカンソウ・ユズリハ・アブラギリ・トウダイグサなどが同じ科に所属し、アカメガシワとの対比の中で共通点を見いだすことは少しばかり面倒です。

 

 それもそのはず、トウダイグサ科はどの科にも分類しがたいものばかりを集めて構成していると言うから納得。分類はその基準と類似性と決定打がないと分けがたい種に遭遇し、「トウダイグサ科」という便利な引き出しに取りあえず納めているのです。

 

 ユズリハは、山と渓谷社刊「樹に咲く花」の図鑑では、DNAの系統解析の結果、ユズリハ科として独立し、一属で構成。樹種はエゾユズリハ・ヒメユズリハと3種のみで1つの科なのです。一属一種で構成する科はめずらしいものではありません。

 

  ★アカメガシワ【赤芽柏・別名サイモリバ・ゴサイバ】

 

◆ 分 布 :本州〜九州〜沖縄〜朝鮮半島〜中国・・樹形:落葉高木・樹高15mに達する

 

◆ 葉 :互生・全縁・ときに浅く3裂・両面に星状毛・葉身基部に腺体が2個・新葉は紅色

 

◆ 花 :雌雄別株・6〜7月開花・枝先に15p前後の円錐花序を出す・花に花弁なし

 

◆ 果 実 :朔果・9〜10月に褐色に熟す・種子は直径約4_の扁球形で黒色

 

◆ 用 途 :器具材・薪炭材・ヒラタケ栽培用原木・下駄材・公園用植栽樹など


◆ 語 源 :葉柄が赤色付くことから。また、葉の上に食材を盛って利用したことによる。

 
   
 2.新葉は鮮紅色で美しい・と同時に紫外線から身を守っている・・

 

 自然の花の色は、赤色から黄・紫・青・緑と多彩です。人間の生活は花なしでは生きられないほど身近にあります。また、植物の花の色は昆虫を引き寄せ、交配に役立っていると考えられており、進化の歩みと共に共生関係にあります。

 

 1) このように花の色が見えるのは、色素が含まれているからです。代表的な色素はフラボノイド系で、根・茎・葉にも含まれており、花色の中心となっているアントシアニンは赤・橙・紫・青・水色までの広い範囲の目立った色を発現しています。


 2) ほかの色素は、赤色・黄色から紫色までのベタレイン系と、カロチノイド系(カロチン類とキサントフィル類に大別)では黄色から橙色、赤色の範囲の色素を含んでいます。

 

 3) クロロフィルは葉緑素とも呼ばれ、緑色を発現し葉や茎に普通に含有。蕾の頃の花は、葉緑素を含んでいて、開花が近づくるとアントシアニン系やカロチノイド系の色素の合成が高まり、葉緑素が消失していくため、赤・黄・白などの花色を観賞できるのです。

 


 4) 同じように新葉の色もいろいろです。特に今回はアカメガシワの鮮紅色の新葉が課題です。


  なぜ赤色になるのでしようか。他の樹種でもタブノキ・ヤブニッケイ・チャンチンの新葉も異色です。

 

 5) 葉に含まれる色素は、緑色のクロロフィル、黄色や橙色のカロチノイド、赤色や紫色のアントシアニンなどがあります。成葉には多量の緑色素が蓄積され、他の色素は隠されたようになり、目立たなくなっているのです。

 

(写真:チャンチンの新葉)

 

 6) 芽吹きの頃の新葉は、緑色色素の蓄積が少ないため、アントシアニンの赤色が目立つことで、鮮紅色の葉を観察することができるのです。

 

 7) アントシアニンや仲間のフラボノイドは、葉の表皮細胞に蓄積し、有害な紫外線を吸収し、葉の内部まで紫外線が到達するのを防いでいるといわれています。

 

 

 
   
 3.先駆者として生き抜こうとする勇姿

 

 地中には出番を待つ「種子」がたくさん眠っています。スイレン科で有名な大賀ハスは、約2000年前の種子が発芽し、千葉市の千葉公園で管理されています。

 

 このように埋蔵種子は、発芽し成長できるチャンスを伺っているのです。大賀ハスの種子は特別ですが、普通、数十年間は暗黒の世界でじっと耐えている種子はたくさんあります。

 

 山火事の高熱に焼かれないと発芽しない「北米のジャックパイン、オーストラリアのバンクシア属の果実」などは特殊な形態です。種子は単に発芽するだけではなく、その地で成長することの可能性がないとなれば、発芽を止めて次の機会まで待つとする機能は「超人的な忍耐」としか言いようがありません。


★バンクスマツ・Pinus banksiana・(ジャックパイン)


  カナダ、米国東北部原産で、日本では防風林に植栽されている。マツ亜属は世界に60種ほどあるが、その半数以上は北米に分布。森林植物園のテーダマツはアパラチャア山脈南部原産で、針葉は3本の三葉松。

 

 バンクスマツの球果(松かさ)は、鱗片にヤニがくっついて簡単には開かないようになっている。球果は落ちずに木についたままで、山火事の熱でもってヤニが溶けて鱗片が開くのを待っている。山火事は大きな被害をもたらす一方、このように期待する種類もあるのです。

 

 オーストラリアのユーカリ類は、油脂成分を多く含むため山火事が発生しやすくなっており、火事の跡焼けた樹幹からは新たな芽立ちが森林の新陳代謝をはかっている。

 

 そこで、アカメガシワの種子は何を感知して発芽の態勢に入るのでしょうか。この点を「鶯谷いづみ著」から引用すると次のようなことが判名。

 

 1) 地下の種子が地上表面の変動を察知するには「水分・温度・光線」がある。その中でも温度変化は地中にも伝わって来やすいし、林地に空間ができれば太陽の照射がはじまり、それなりに地温が高くなるはずです。

 

 2) ヌルデは硬い種皮に保護されているため、50度以上の高温にさらされないとカラを破ることができないのです。そこから水分を吸収し発芽の可能性ができたにしても、森林の中では難しい発芽から成長過程をたどることになり、それだけ成木を見れる数は少ないのです。

 

 3) それに反して、アカメガシワの種子は容易に水を吸収できますが、35度前後の温度を数時間経験しないと発芽しないのです。これだけの高温は林内では体験できません。従って、空閑地で太陽光のよくあたる箇所に限って、アカメガシワを見ることができるのです。

 

 アカメガシワの芽吹きの他に、クズやタラノキ・ヌルデ・カラスザンショウなどもパイオニヤ的な活動が見られることから類似植物のようですが、この前3種は土中の塊茎や根茎からの萌芽などにより新個体を作り出す機能をもっているのです。                          
 人類よりも数億年かけて進化してきた植物は、まだ解明されていない点がたくさんあります。特に医学界に貢献している植物は数知れないほどです。ガン治療・予防など多くの新薬は植物の組織から発見されています。人類にとって、未だ知られていない植物界は大切な宝庫です。

 

 

(文責:田代 誠一)

 

 
   
   

注:本件資料は、NPO帆柱自然公園愛護会の会員研修用にまとめたものです。お互いが研鑽しながら自然環境の大切さに取り組んでいます。今回の資料作成にあたり、下記の引用・参考文献を有効に活用させていただきました。

 

【引用参考資料】
・原色日本樹木図鑑  保育社/北村四郎ほか著
・植物学入門講座2  加島書店刊/井上浩著
・植物の系統  文一総合出版/田村道夫著
・植物の世界  朝日新聞社刊/武田幸作著他
・植物の世界  朝日新聞社刊/菊池多賀夫著
・牧野日本植物図鑑  北驫ル/牧野富太郎著
・森の木の100不思議  日林協/鶯谷いづみ著
・樹に咲く花  山と渓谷社/高橋秀男他監修
・植物の進化と多様性  放送大学教育振興会/森脇和郎ほか著

 
   
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