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森 の 不 思 議    第23話
「がま よし あし の生活戦略」
ちょっとだけ聞いて下さい 損をしない話です
 
   
 1.ガマという植物の歴史観・・ガマ科

 

 

 ガマ科はガマ属一属からなり約12種があり、世界各地に分布し、北半球に多く、沼や川の湿地の泥地に生える多年草。日本にはガマ・コガマ・ヒメガマの3種が自生する。

 

 長く伸びる根茎、葉は長い線形、基部は茎を包む、茎は中実、円柱形で直立し、分岐せず、先端に円柱状の歌穂(穂状花序)をつける雌雄同株。茎の先端に雄花穂を、下部に雌花穂がつく。

 

 ガマは風媒花である。雄花は少しでも遠くへ飛ぶように上位に配置。雌花は花粉を受けやすいように下部に配置。秋に果実が熟すと穂の端から糸状体が綿のように飛び散る。これを「蒲の穂綿」という。花期は6〜8月。

 

 日常生活に密着した蒲焼き、蒲鉾、蒲団の漢字から「ガマ」という植物を観察するにはいい機会である。また蒲の薬効を白ウサギに教えたのが大国主命であることから、神代の昔からガマが生えていたことを現している。「蒲」・「蒲の穂」は夏の季語。

 

★ 昔々の「ガマ」の生活史は・・

 

  蒲の穂はソーセージやアイスキャンディを連想し、昔からの語源に繋がるからおもしろい。鉾のように見える穂先は、「がまほこ」といわれ、これが「かまぼこ」の語源となる。

 

 昔のかまぼこは、ちくわと同じように棒に盛られていた。それが蒲の穂に似ていたので「蒲鉾」とかき、蒲の字が当てられている。

 

 昔のウナギのかば焼きは、今のように開いて焼くのではなくて 棒に刺して焼いた。その形もガマの穂にそっくりだったので、かば焼きは「蒲焼き」でガマ(蒲)の字を当てている。

 

 自家受粉を避けるために、雄花が先に開花し、散った後に雌花が開花するように工夫されている。熟した実から「穂綿」が飛散するが、座布団の綿がわりに使われたことから「蒲団」とも書く。

 蒲鉾・蒲焼き・蒲団の表現は「なるほど」と歴史の積み重ねを痛感するしだいである。さらにガマは昔から有用な植物であった。

 

  古事記には「因幡の白兎」がワニザメに赤むけにされた皮膚を、ガマの花粉で癒したという話がある。花粉は「蒲黄・ホオウ」といって止血剤として使用され、「石松子(ヒカゲノカズラの胞子)」の代用とされた。また、硝石を混ぜて火打ち石の発火の火口として用いたという記述もある。


 昔、因幡の白うさぎの話の中心は「ウソを言うと天罰がくだるのだ」として常日頃から慈悲心を養うような説法として聞いた記憶がある。

 

 ガマの一本の穂には約35万個の種子が入っているという。ガマの穂は小さな雌花が集まっ てできている。35万個の花が咲き・35万個の雌しべが花粉を受粉し・35万個の種子を宿す。

 

 35万は高知市・奈良市・長野市の人口と同じである。小さな穂の中に35万もの花が集まるには、それなりに簡素化することが必要。そこでは雌しべ・雄しべは一個だけ、一つの花は一粒だけの種子をつくるようになった。すばらしい集約化である。

   
 
   

 2.ヨシという植物の観察・・イネ科


 大型の多年草であるヨシ属は世界に4種が分布する。生える環境は「ガマ」と同じで、日本全土の湿地・河川・池沼で大群落をつくる。高さ1〜3mになる大型の多年草。

 

 葉は下垂し、根茎は長く横走する。茎は分枝しない。葉鞘は緑色。花期は8〜10月。

 

 図鑑の上では「アシ・山と渓谷社」、「ヨシ・植物の世界」、「アシ・牧野日本植物図鑑」など、いろいろあるが統一された和名はない。

 

 ヨシは近来その役割が再認識されている。 水質浄化の機能が高いことから、滋賀県ではヨシ保護条例を制定。

★ 呼び名が変わるからおもしろい。聞き違いのないように・・

 

 ヨシ(葦)はアシともいいまして、アシは大阪市の花。商業都市の大阪では「アシ」はお金を意味する「お足」を連想し、縁起もいいが、「アシ」は「悪し」にもつながることから「良し」にかけてヨシとも呼ばれている。図鑑上はヨシでもアシでもよい。

 

 昔、江戸でも一番の遊郭の場所を「吉原」と言いまして、元をたどれば「ヨシ」がたくさん茂っていたからであって、当時の風景が浮かんでくるようです。

 

 江戸の町中から「吉原」に行き来するには、途中はたいへん寂しいところを通ったそうです。それでも夜ともなると、不夜城のようであったそうです。

 

 日本の国のことを「豊葦原瑞穂の国」と言っていたように、いたるところにアシが生え、稲の実り豊かな国であったことから「こういう呼び方」が生まれたんですって。

 

 民族的にも身近な植物であり、芽立ちのヨシは軟らかくて食用に役立つので「ヨシ・葭」、穂を出さないで長大なものは役立たないので「アシ・蘆」、葉が枯れ茎が硬くなると「葦簀・ヨシズ」などとして利用できたので「葦・ヨシ」などと呼び名がかわる。

 

 出征魚(ブリ)みたいに名前が変わる植物はそんなにはないと思う。「ヨシ・葭」`「アシ・蘆」`「葦・ヨシ」は、古くから生活に密着していたことを知ることができる。



▲成長するにつれて呼び名の変わる「出征魚」
(幼 魚)  (中年魚) (成 魚) (特大魚) (主な地方)
セイゴ    フッコ    スズキ   スズキ    東 京
ワカシ    イナダ    ワラサ   ブ リ     東 京
ワカナゴ   ヤ ズ    コブリ   ブ リ     九 州

 

(文責:田代 誠一)

 
   
   
【参考引用文献】

「植物の世界」   朝日新聞社 大場達之 藤本義昭著
「身近な雑草」  草思社 稲垣栄洋著
『九州の花図鑑』  海鳥社 益村 聖著
「野に咲く花」  山と渓谷社 林 弥栄監修

 
   
 
   
   
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