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森 の 不 思 議    第22話
「植物の特異な性質」
こんなにも特技があるのです
 
   
 1.植物と動物のちがいから特質を探求

 

 植物の特異な性質を探求する前に、動物とはどんな違いがあるのかを知っておく必要がある。

 

1.植物は光合成のはたらきと葉緑素をもつこと。この点が特質のトップでもある。

2.植物はふつう、動物のように有機物を必要としない。光と炭酸ガスと水とアンモニア、リン酸などの若干の無機イオンがあればよい。それらを太陽と大気と土と雨から吸収。

3.植物は一生涯そこから動くことができない。いろいろな繁殖方法をもつことや巨大で長生き、なども特異な性質。

4.以上の他に構造体系・環境と生態系・繁殖などで動物との違いを外観からも知ることができる。

 

京都御所・左近の桜
 
   
 2.植物のもつ特異な性質とは・・要点のみ抜粋・・

 ア: 植物の呼吸・光合成


 この機能こそ動物界とは最も異質の機能であり、光合成は光エネルギーを用いて大気中の二酸化炭素を有機物に取り込む作用である。二酸化炭素の固定と窒素固定を含めた広義の光合成もある。光エネルギーを用いて無機窒素からアミノ酸合成など、有機物合成 の過程を広く指す用語として用いられることもある。

 

京都御所・右近の橘
 イ: 植物の運動の種類


  1.回旋転頭運動
茎の先端の成長軌跡は、上から見下ろすと円か楕円を描きながら運動している。このような動きは器官の成長帯の早い部分が規則的に変化するためである。

 

  2.重力屈性
茎はまっすぐ上に伸び、根は真下に伸びる。一般に植物の茎は負の屈性を、根は正の屈正を示す。また、側枝・葉・側根は重力方向に対してある角度を保ちながら成長して傾斜重力屈性を示す。重力方向に対して直角・水平に伸びる地下茎や枝は側面重力屈性を示す。

 

 3.水分屈性
根が水分の多い方向に成長する性質を水分屈性という。ウリ科やマメ科の植物の根で顕著に表れる。湿度差の感受は根冠でおこなわれる。

 

 4.接触屈性
つる性の巻きひげは代表例である。硬い物体に植物が接触すると、接触した側の細胞が収縮を始め、反対側の細胞は急速に伸長を始める。その結果、巻きひげは支柱に巻きつく。

巻き髭が支柱に巻きつくと伸長成長がやがて停止し、巻き髭の基部は 偏差成長によりコイル状になる。巻きひげは背腹性を持ち、背部は凸型をしている。

 5.傾性・・花の運動
花の運動は、花被の内側と外側の細胞の成長速度の差によって起きる。タンポポの開花運動は明るくなると開花する。
−−> 光傾性の例

 

 チューリップの開花運動は温度が高くなると開花、低くなると閉じる。
−−> 熱傾性の例


(花被の内外の細胞は成長適温に差異があり、内側よりC10度低いために動きが起こる。)

 

 6.傾性・・葉の運動
葉の睡眠運動には葉柄の上偏成長によるものと、葉枕の膨圧運動によるものとがある。 成長しつつある葉は24時間周期の上下運動をする。一般的に葉は昼間は上昇し、夜は下降する。この運動は光傾性の一種。 

 

 葉の上下運動は葉柄の成長帯の上側と下側での成長速度の差によって起こるが、この差は葉から輸送されるオーキシンの葉柄の上側と下側の濃度が周期的に変化することによっている。

 

 ウ: 分化全能性


  植物特有の性質に「分化全能性」がある。1セットのゲノムを持った1個の植物細胞は、1個体に分化する能力ほ持っている。

 葉や芽の一部を切り離した場合に、その部分は通常は生存できない。しかし、生育に必要な各種の栄養素が与えられると、植物の体の一部、一個の細胞からでも完全な植物体を再生する能力がある。これを分化全能性という。

 

 この性質を持つことで、生殖なしに栄養繁殖が可能であり、また別の遺伝子を細胞に組み込むことで植物体を再生することができる。

 

 エ:自家不和合性・近交弱性


 花粉や胚嚢が完全であっても、生理的や他の原因で受粉の行われない不和合性などがある。不和合の原因は、花粉の不発芽・花粉管の花柱への進入不能・花粉管成長速度の低下・花粉管の異常形態・成長停止による受精不能、などが含まれる。

 

 自家不和合性と交雑不和合性とがある。自家不和合性は被子植物や藻類、菌類、シダ植物、裸子植物にもみられる。

 

■ 自花受粉・自花受精ともいう(一つの花の中で受粉する)   自家受粉
■ 隣花受粉・(同じ株の花で受粉する)
■ 他花受粉・他家受粉ともいう(別々の株の花で受粉する)   異花受粉

 

 自花受粉は植物の近親結婚であり、遺伝学的に好ましくない。よい子孫を残すためにいろんな自家受粉を避ける仕組みがみられる。

 

1.雄しべ・雌しべの位置の高低差のため受粉困難=マツバボタン、ハイビスカス、タッポウユリ、アヤメ、カキツバタなど

 

2.雄性先熟(雄ずい先熟)=雄しべが先に熟し、雌しべが後で熟するもの。タンポポ、ヒマワリ、コスモス、キキョウ、ゲンノショウコ、ホウセンカなど・雌雄異熟現象。

 

3.雌性先熟(雌ずい先熟)=雌しべが先に熟するもので、雄しべが熟する頃には雌しべの柱頭はしおれてしまっている。オオバコ、モクレン、イヌサフラン、アブラナなど

 

4.異型ずい現象=「二型花・長短の2タイプあり」・「三型花・長中短の3タイプあり」同じタイプの雄しべと雌しべでないと受粉、受精がおこらない。 

 

5.以上の他に、自花又は自家の花粉がついた場合には花粉が柱頭で発芽しない場合がある。これを自家不和合性という。長十郎梨の同しでは受精しない。二十世紀梨の花粉となら受精する。モモ、アンズ、リンゴ、ブドウ、ペチュニア、テッポウユリ、アブラナ、タバコ、バラ、など。

 

 オ: 繁殖方法−有性繁殖と無性繁殖


  植物の分類方法に隠花植物と顕花植物がある。顕花植物では繁殖のための花があるが、隠花植物には花がない。

 このように雌雄の性別がある細胞の合体でできたものが繁殖のための出発点となるものを有性繁殖(有性生殖ともいう)と呼んでいる。花は有性繁殖のための器官である。

 

 一方、植物体の一部が独立して新しい個体となる方法も多い。これを栄養繁殖(無性繁殖、無性生殖ともいう)と呼んでいる。隠花植物にも無性繁殖がみられる。

 

 多くの植物は有性繁殖と無性繁殖の両方をおこなうことができる。むかご形成、塊茎や根茎による繁殖、ストロンによる繁殖、葉や茎、等からの再生は栄養繁殖の一種。

 

 園芸で用いている取り木、挿し木、株分けなども人為的な栄養繁殖の形式である。

 

 カ: 植物の性転換・性同一性障害

  被子植物の場合雄しべが雄性器官で雌しべが雌性器官という。両方をもつものを両性花と呼ばれ、一方しかもたない花は単性花という。

 

 テンナンショウ属の花は年によって雄花になったり雌花になったりする。このような性表現は球茎の重さによって決まることが栽培実験の結果判明。


  球茎が一定以上の重さに成長すると雄花をつけるが、さらに球茎が重くならないと雌花をつけない。植物の場合は雄花から雌花に、また逆に雌花から雄花に変化が可能な点は、動物界にはありえない大きな違いである。

 

 アケビはつる植物であるが、短いつるの時は花はつかないし、しだいに大きくなると雄花から雌花を増やしていく。ウリハダカエデやクロユリなども性転換をおこなう。

 

 
 

 以上のほかに、「植物の光周性」、「樹木は巨大で長生き」、「水はどのようにして高い位置まで運ばれるのか」、「花の表現の複雑性」、など植物のもつ不思議さはつきない。

 

 (文責:田代 誠一)

 
   
   
【参考文献】

樹木社会学・東京大学出班会・ 渡邊定元 著
植物生理学・放送大学教育振興会・増田芳雄、菊山宗弘 著
生物の進化と多様性・同  上・森脇和郎、岩槻邦男 著
植物の世界・朝日新聞社・木下栄一郎著
植物の繁殖・加島書店・井上 浩著

 
   
 
   
   
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