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森 の 不 思 議    第21話
「人間の呼吸、植物の『呼吸と光合成』のちがい・・」
人間が取り込む酸素・植物が取り込む酸素のはたらき・・

 

 人間の呼吸と植物の呼吸はどう違うのか・・? 大気中の窒素・酸素・二酸化炭素は人間にとってはどんなはたらきがあるのか、また、植物も同じ大気の中で息づいているが活用の仕組みはどうなっているのか、など不思議なことと疑問点は多いのです。

 

 人間とちがって植物には炭酸同化作用(光合成)、窒素同化作用などの特性がある。また吸収した栄養素の体内の流れは適正でなければならないが、時として、植物も人間も過多や過少に陥り、弊害の発生原因になりがちなのです。

 

 最近、内臓脂肪による肥満と生活習慣病が複合した状態を「メタボリック症候群」といい、肥満・高脂血症・高血糖症・(糖尿病)・高血圧などが2つ以上複合して現れた場合に「メタボリック症候群」と呼んでいる。

 

 植物は糖質・脂肪・タンパク質を含む種子や根っこや葉っぱを生産するが、窒素・リン酸・カリの三要素の過多・過小による弊害をしばしば現象として見ることがある。

 

 人間は栄養素を吸収し、植物は養分を吸収しているが、これは独立栄養(植物)と従属栄養(動物)による生き方の違いでもある。

 
   
 1.人間と植物の呼吸について


 ヒトは口と鼻と皮膚で呼吸をする。植物は気孔と皮目と呼吸根(膝曲根・板根など)で呼吸する。植物の光合成は知っていても呼吸自体はあまれ知られていない。どこで呼吸しているのかが判っていないのが普通である。

(カシの気孔は裏面だけに1192個・サクラは249個・・1o平方当たり)

 

 

■ 生物が呼吸するとき「空気」吸い込むが、人間と植物とではこんな違いがある

 

A.ヒトにとって酸素は細胞の活性化に必要だが、二酸化炭素は全く不要、窒素は植物を食することで吸収する。

B. 植物にとって酸素は活性化に必要だし、二酸化炭素は光合成に必要。窒素はそのままの形では吸収できない。

C. 窒素は生物が生きていく上で欠かすことのできない要素であり、形を変えて吸収している。
マメ科植物などは、根粒菌との共生により窒素固定をおこなう。人は植物が蓄えた糖質・脂肪・タンパク質を口から吸収する。

 

 ア: 人の呼吸について [口・鼻・皮膚]


  人間は呼吸によって酸素を取り入れて体内で栄養素を酸化し、その時に生ずるエネルギーを用いて生活している。呼吸数は成人で1分間に14〜18回程度。立位の場合は毎分20回、座位で毎分18回。絶えず酸素を消費し、安静時の酸素消費量は1分間に0.20〜0.25g程度。

 

A. 呼吸によって体内に取り入れることのできる酸素の限度は、1分間に4g(通常人・2〜2.5g)程度。これ以上の酸素を消費する作業では酸素が体内で足りなくなる。作業が終わってしばらくの間は呼吸量が増加し、酸素負債を返済することになる。

 

B. 呼吸量の増加は、1分間単位では次のとおり。
速度(1分間)に50mのとき・・呼吸量は10g・・消費酸素量2.0g
同上    80mのとき・・呼吸量は16g・・消費酸素量3.2g(普通の歩き)
同上   100mのとき・・呼吸量は22g・・消費酸素量4.4g 

 

C. 体の機能を保っていくために呼吸によって肺から酸素を取り入れ、これを組織に与えて酸化作用を行い、その結果生じた炭酸ガスを血液に受け取って肺から外に出される。

 

D. 酸素濃度が18%を下回ると酸欠状態。また硫化水素濃度が10ppm以下であると、酸素欠乏の事故につながるので要注意。

 

 
 イ: 植物の呼吸について [気孔・皮目・呼吸根]


 
植物の呼吸は、気孔と樹皮にある皮目及び呼吸根によっておこなわれる。植物の生命活動に必要なエネルギーを取り出す過程である。

 

 外呼吸は植物体の外界との間で酸素と二酸化炭素の出し入れ行うガス交換である。内呼吸(細胞呼吸)は、細胞内でブドウ糖を分解して生命活動に必要なエネルギーを得る過程である。

 

写真:皮目
樹皮の表面に円形状の盛り上がりが見られる。 中には粒状の隆起が見られるものもある。

 

■ 光合成による二酸化炭素の吸収

A. 植物の呼吸は光合成とは全く逆の働きであり、晴れた日中は光合成が活発に行われ、呼吸は目立たない。光合成は二酸化炭素の吸収・呼吸は酸素を取り入れ二酸化炭素を放出。

 

B. 緑色の植物だけが行う光合成は、他の生物が真似できない偉大な働きである。光合成は太陽エネルギーと二酸化炭素と水からデンプンなどの有機物と酸素を合成することであり、酸素は副産物として気孔から捨てられる。

 

C. 光合成の場所は葉の細胞の中の葉緑体で行い、無機物から有機物を作り出す化学工場のようなものである。光合成は太陽光がないとできない。

 

D. 植物も生物である以上、呼吸をおこなう。呼吸は光の有無に関係なく、日中から夜中でも行われている。呼吸は気孔や皮目から酸素を取り入れ、二酸化炭素を放出する。

 

 

■ 呼吸による酸素は、そのまま細胞へ

A. 植物の細胞間隙は、動物の体で言えば肺や血管に相当する役割と同じである。植物のほとんどの全ての組織にはこのような微細な細胞間隙(数マイクロメートル)が隅々まで存在し、ネットワークを形成している。

 

B. 地下茎の蓮根は酸素の薄いところで呼吸しているため、細胞間隙がこんなに大きくなっている。特殊な細胞間隙であり、普通は目視できない。

 

C. 葉・茎・根の全ての生きた細胞は、呼吸に必要な酸素を細胞間隙から取り入れ、生じた二酸化炭素を細胞間隙に放出する。ネットワークを通じて気孔から排出される。

 

D. 茎(幹)には気孔に代わって皮目という組織がある。皮目から入った空気も同様に細胞間隙のネットワークを通じて植物の体内にいきわたる。

 
   
 2.人体における酸素の働き・・活性酸素は悪玉・・

 
全ての生物は、身体に取り入れ入れた食べ物をエネルギーに変えるメカニズムをもっている。
ここで重要な働きをするのが酸素である。1日約2000iの食事を摂取するが、これを体内でエネルギーに変えるため500gもの酸素を消費する。

 

A. 体内に取り入れた食物は消化吸収され、血液によって身体の隅々の細胞に運ばれる。さらに細胞内のミトコンドリアで熱エネルギーを蓄えた分子が作られる。酸素はここの過程で行われる化学反応を効率よく行うための助っ人なのである。

 

B. 酸素の特徴の一つは、他の物質に結びついて「酸化」させやすいこと。ものが燃えることはその物質が酸素と結びついて、激しく酸化していることである。

 

C. 反面、有害な活性酸素の発生には要注意。分子構造は酸素分子と大差はないが、酸素分子以上に不安定かつ強引な性質をもつ。体内に活性酸素の発生を止めることはできない。

 

D. 活性酸素は糖質・脂質・アミノ酸など各器官を構成する分子を酸化(鉄サビ)するなどして、体内に悪影響を与える。発生量は個人差があり、活性酸素が増えやすい生活や環境に要注意。

 

E. 食品添加物の食品は体内に入ったとき異物と見なされて肝臓で解毒される。この過程で活性酸素が発生して肝臓を攻撃。肝機能障害などの原因になる。

 

F. 活性酸素の発生をおさえる生活をする。タバコは吸わない・スポーツは気長に・ストレスをためないリラックスタイムをつくるなど・・・・。

 

G. 活性酸素を撃退するスカベンジャーとして注目されている成分は、アントシアニン類・カテキン類・ロズマリン類などで、これらを多く含む食品は、赤ワイン・ココア・緑茶・ゴマ・ゴマ油・さけ・いくら・たい・トマト・スイカなど。野菜、魚類の赤い色素に含まれるカロチンは有効。  

 

(文責:田代 誠一)

 
   
   
【参考文献】

基礎栄養学      講談社サイエンティフイク/木戸康博他著
新版衛生管理     中央労働災害防止協会編
植物の世界4巻    朝日新聞社/柳津広志著 ほか

 
   
 
   
   
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