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森 の 不 思 議    第15話
  「草本の帰化植物は多いが、なぜか帰化樹木は少ない」
植物や昆虫や鳥の世界には計り知れない不思議がいろいろ・・?

 

 外来植物である「ヒメムカシヨモギ・オオアレチノギク・ヒメジョオン・ハルジオン・ブタクサ・オオブタクサ・・」などは、明治・大正期に米国から渡来した植物である。いつの間にか野生化し、いたるところで繁茂している。迷惑植物の一種である。

 

 外来植物であって日本の気候風土に適応し、自然界に自力で繁殖していく植物のことを「帰化植物」と呼んでいる。草本性の植物に帰化植物は多いが、なぜか樹木に帰化したものが少ないようだ。日本の在来樹木の林相がそう簡単に侵入を許さないのは日本列島の環境にある。

 

日本に渡ってきた樹木の中で、仏教の伝来と同時に伝わったと言われている「イチョウ」は、単木的に神社仏閣の境内で見かけることが多い。とても自然発生的に繁殖している状態ではない。これを帰化しているとは言えない。

 

 なぜ草本に多くて、木本に少ないのか。不思議な現象である。植物界にはまだ判らないことが数多くある中で、身近な森林内でこんな不思議な植物を見かけることがある。 

 
   
1.不思議な生理や形態をもつ植物・・・?

 

 普通の植物のような生理や形態をもつものであれば、何も不思議さはおきない。だが、すこし変だなと気がついたら「どうして・・?。生物として何の意味があるのか・・?」など、懐疑的になってくる。例えば

 

1.腐生植物のツチアケビやギンリョウソウは葉緑素をもたないので、植物として成長することはできない。あまりにも短すぎる生涯なのに、なぜ出現するのか・・? (ナンバンギセルやハマウツボは一年生寄生植物)

 

2.彼岸の季節にあわせてヒガンバナが咲く。開花の時間差はほとんど狂いがない。毎年同じ時期に咲くのだが地上に葉はない。花と葉は決して顔を合わせることがない。なぜ別々なのか。他の植物に見られない生態である。

 

3.長年生き続けている森林の中で、ウリハダカエデ・ヤブツバキ・タブノキなどが仲間同士でドッキングしている現象を目にすることがある。風雪に耐えながら生きつつも隣同士の樹木がドッキングしている様子に、ただ唸るばかりである。自然は不思議の宝庫だ。

 

ギンリョウソウ ヒガンバナの白 ウリハダカエデのドッキング
 
   
2.日本の帰化樹木は「アカギ」の只一種か・・? クスノキを帰化といえるのか・・?


 小笠原諸島の母島は以前から植生が貧弱であるとして、熱帯原産のアカギを人工的に植林。ところが母島の土地に適合したのか半常緑の高木は、繁殖力旺盛にして樹冠を広げ、日陰や披圧の状況を生じさせ、かえって土着の植生を駆逐するかたちとなり、迷惑な植物になっている。

 

 アカギは被子植物・双子葉離弁花類・トウダイクサ科・アカギ属で、20mにもなる高木で、樹皮は褐色で縦に割れ目が入って剥がれる。用途は街路樹が多い。

葉は互生し長い柄のある3出複葉、葉縁は鈍い鋸歯縁、単葉は卵状楕円形で先は尾状に尖る。雌雄別株。アカメガシワもトウダイクサ科。

(写真は山と渓谷社発行・樹に咲く花2より)

 

 クスノキは関東以西の四国・九州の山地でよく見かける。原産地は熱帯だとか自生種だとか意見が分かれているが、外来種であったら帰化樹木の様子が濃厚である。

 

 神社仏閣に残る奈良平安期の仏像や彫刻物は、クスノキを原木とするものが多い。かなり昔から自生していたのではないのかという思いはあっても、自生の根拠の研究まちである。

 
   
3.帆柱山系の植物層に「帰化らしき」樹木は見られるのか・・・?


 帆柱山系の植物層で繁殖力の旺盛なのは、裸子植物のスギ・ヒノキ・マツである。双子葉類の広葉樹系は針葉樹にはおよばない。本当にそうかなと思っていたら偶然にも広葉樹の小群落を発見。それはカクレミノである。帆柱山系では少ない樹種だと思っていたらまるで反対。

 

 植物園内で小群落を発見したが、発生の原因はヒヨドリの好物である実の排泄にありそうである。湿り気のある照葉樹林が適地であり、今後とも継続観察の対象樹木である。

 

 地球上の一画を占める帆柱山系の森林にはいろんな多様性や共生関係が混じり合って自然環境を維持している。それだけ不思議な出会いも多い。

 

 中国原産のオニマタタビをニュージーランドで品種改良したのがキウイフルーツ(雌雄別株)であり、日本人の食卓に欠かせない果物である。

 

 キーウィは飛べない鳥の呼び名である。外敵がいないニュージーランドでは飛ぶ必要がなかったため、今でも飛べない鳥が生息している。タカヘも飛べない鳥である。

 

 鳥は飛ぶのが当たり前。こんな常識が通用しないのが生物界。帆柱山系で「飛べない鳥」を見かけることがあるといっても誰も信用しないのが常識・・。

 

 

キアゲハ蝶は写真のように3齢幼虫から5齢幼虫へと成長し、蛹の段階を経過して成虫になる完全変態の昆虫である。卵から幼虫〜芋虫〜成虫への変態は本当に神秘的な不思議さがある。

 

(文責:田代 誠一)

 
   
   
【参考文献】

樹に咲く花   山と渓谷社・太田和夫ほか著
生物の進化と多様性   放送大学教育振興会・森脇和郎、岩槻邦男 著
里山蝶ガイドブック   藤田正美発行・新開 孝著  ほか

 
   
 
   
   
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