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植 物 談 義    第8話
「帆柱山系の樹木は百年以上も二酸化炭素を吸収」

CO2はあまり多くても困るんです。地球を救うのは樹木と省資源です。

 

 人類が快適な生活環境を望めば望むほど、地球の環境は汚れるばかりです。我が国は2002年6月に「京都議定書」を締結し、温室効果ガスの排出量を2012年までに1990年と比べて6%削減(この数値の3.9%を森林が分担)することを国際社会に約束しました。

 

 ところが、2000年に計測した結果は1990年に比べて8%も増加。合わせて14%もの削減を果たさなければならなくなったのです。削減目標を達成するにはたいへん厳しい状況にあるといえます。

 

★注・・京都議定書の対象になっている6種の温室効果ガスの排出量は、2000年度総計は約13億3千万トン、基準排出量の12億3千万トンより8%増加。

 

 とりわけ地球温暖化現象がこれ以上すすむと、海水面の上昇や農産物への影響、微生物や病原菌の繁殖など、人間の生活にとっては悪影響のオンパレードです。

 

 増えすぎた二酸化炭素の吸収源は、地球上の植物であり最も大量に保存できるのは森林でしかないのです。今日まで日本の森林について「機能」をより判りやすくするために、貨幣価値に換算し、森林機能評価を発表してきた経緯があります。

 

 
   
 1.30年前の森林機能評価は、机上の空論扱い  だが今は..

 

  森林の働きの中で、最も注目されているのが光合成です。二酸化炭素を吸収し、酸素を供給する機能は、国際的な取引の対象にまで発展したきたことは、30年前には想像も出来なかったことです。

 

 

 以前は人類は植物と「共生関係」にあることなど、一部の理解に止まり、森林のもつ他の機能でも、水源涵養機能は昔から付き合いが古く、手痛い目に遭った経験から、大気浄化よりも重視されてきたことは事実です。

 

 昭和47年(1972)に最初の森林機能の評価が実行されたのですが、当時の風当たりは冷たく、絵に描いた餅としての扱いが濃厚でした。

 

 ところが、どうですか、この評価と「京都メカニズム」の趣が少し違っているとしても、二酸化炭素吸収能力を国際的に「売買」できるようになったことは、30年前にはとても考えられないことであったのです。

 

★「京都メカニズム」とは、削減目標の6%を達成する上で、国内での努力の他に国外で排出枠を取得し、目標達成に利用できる仕組み。具体的には3つの仕組みを総称していう。

 

◆排出量取引・・他の国での削減分を取引(売買)し、目標達成に利用できる仕組み。
達成を課せられた先進国同士の間で認められた取引。


◆共同実施 ・・他の先進国で温室効果ガスの削減事業を実施し、削減分を自国の目標達成に当てることができる。


◆クリーン開発メカニズム・・他の途上国で温室効果ガスの削減事業を実施して途上国の持続可能な開発を達成するとともに、削減分を自国の目標達成に利用する仕組み。具体的には吸収源事業として新規植林、再植林を対象に投資国(先進国)の基準年排出量の1%まで利用できる。

 
   
  2.森林の機能評価額は
    帆柱山系の評価額は15億5700万円(年間/単純平均)

 

 日本の国土の約70%を森林が占めています。この森林の働きは、水源のかん養や山地災害防止機能や木材生産機能など、生活に直面した生命財産を守る働きとして昔からよく知られており、全ての生物が生きていく上で大なり小なり森林の恩恵を受けています。


 これらを公益的機能といっていますが、貨幣換算できる機能について評価したのが「75兆円・平成12年再評価」なのです。全ての機能を貨幣換算できませんが、日本の森林は国家予算にほぼ匹敵するほど、重要な働きを発揮しているといえます。以下機能別では・・・

 

A.水源かん養機能(渇水緩和・洪水緩和・水質浄化)=約27兆円


B.山地災害防止機能
(土砂崩壊・土砂流出・なだれ・落石・浸食などの防止)=約37兆円


C.生活環境保全機能(二酸化炭素吸収=1兆2400億円・酸素供給=3兆9000億円
・気温緩和・水害防備、風害・雪害・潮害・霧害・騒音などの防止)


D.保健文化機能(レク・保養・スポーツ・ふれあい等の場の提供、野生鳥獣の保護・遺伝子資源の保全・・など) =約6兆円


E.木材生産機能(木材生産・森林生物の生産・・など)


(注・・太字のみが評価可)

 
   
  3.森林の二酸化炭素吸収量はすごい・・・他に変わる機能はないのです

 

  我が国の二酸化炭素削減目標は6%、内3.9%は森林が分担。その量は1300万炭素トンを森林による吸収量で確保することを目標とするものであり、森林整備の推進が必須要件であります。

 

 二酸化炭素の吸収は、草本ではだめであり、樹木は樹体に炭素を蓄え続けることから、森林の役割はますます重要な位置にあります。

 

 そこで、樹木はどのくらいの吸収能力があるのかを示したのが次の数値です。


★人間の呼吸から排出されるCO2を吸収するには樹木23本が必要。
★自家用車から排出されるCO2を吸収するには樹木160本が必要。
★1所帯から排出されるCO2を吸収するには樹木460本が必要。

 

 このことから森林の維持増大が緊急課題であることがご理解がいただけると思っています。また二酸化炭素の発生源を押さえる技術開発、省エネ、リサイクル活動の進展なども急速に地球規模で展開することを強く望むものです。

 

  (文責・田代誠一)

 
   

【参考資料】

 

 ・ 地球温暖化問題   気候ネットワーク編/中央法規
 ・ 環境学と環境教育   鈴木 紀雄ほか編/かもがわ出版  
 ・ 地球環境キーワード事典   地球環境研究会/中央法規

 
   
 
   
   
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