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植 物 談 義    第21話
「植物の養分吸収は二系統あり・・そのちがいは」
植物が貯めこんだ養分は、子孫繁栄のための食糧なのに・・

 

  クロロフィルをもつ多くの植物は、外界から無機物だけを取り入れて有機物を合成することができるので独立栄養生物と呼んでいる。体内にクロロフィルをもたない動物は、有機物を合成でできないので従属栄養生物といい、植物なしでは生きられないのが人間などの動物である。

 

 私たちは生存に必要な物質を通常、食物として摂取している。それらの中で生体にとって必要な物質を栄養素と呼んでいる。栄養素は化学構造と生理作用から糖質・脂肪・蛋白質・ビタミン・無機質(ミネラル)などを5大栄養素という。その他の食物成分として食物繊維・オリゴ糖・香辛料・嗜好飲料などがある。

 

 一方、植物が必要とする元素は、炭素・水素・酸素・窒素・マグネシュウム・カルシュウム・カリウム・硫黄・リン・鉄の10元素である。農業で食糧増産をはかるには、肥料の3要素「窒素・燐酸・加里」は欠かせない資材である。

 

 自然界における草本類も、木本類も、目的とするところは「子孫繁栄」のために花を咲かせ、結実をはかり、撒布することでその役目を終えるのである。この間の養分や肥料の吸収は、人間の栄養素の吸収と比べて、植物は自然まかせが大半である。

 
   
1.植物の養分吸収は2系列・・一つは光合成・もう一つは根系から
 

 植物は土壌中の水分を吸収し、空気中の二酸化炭素を取り込んで、酸素を発生するとともに、炭水化物(デンプンやグルコース)などの有機物を合成することを炭酸同化という。炭酸同化はエネルギーが必要である。光エネルギーを用いる場合を光合成という。

 

 一方、光合成でつくられたショ糖(スクロース・砂糖の主成分)などの同化産物の輸送路は篩部である。篩部を通って、葉から成長中の茎頂や根端、果実や種子、あるいは茎や根の貯蔵組織などへ運ばれる。

 

 ア:樹木の光合成の仕組み


1.
光合成は太陽エネルギーを利用して、炭酸ガスと水から炭水化物をつくり、酸素を放出。1sの植物体をつくるために約1.6sの炭酸ガスを吸収し、約1.2sの酸素を放出する。

 

2.森林の成長は、土地の肥沃度・気象条件・土壌条件によって異なるが、おおよそ1fで1年間に15〜30屯の炭酸ガスを吸収し、11〜23屯の酸素を放出する。
(◆ 1ヘクタールの森林で約40〜80人が呼吸するのに必要な酸素を供給している。)

 

3.森林の樹木は、葉の気孔から二酸化炭素を吸収し、葉の細胞の中にある葉緑体で光合成がおこなわれる。葉で作られた糖は師部をとおり、幹を作り出す細胞に送られる。

 

4.細胞はその糖を原料にして木の成分を合成し、木材を組み立てる。一方、枝葉幹根の中の生きている細胞は、呼吸をし、二酸化炭素を放出する。

 

5.光合成によって二酸化炭素を吸収し炭素を固定する樹木は、木造住宅の木材1立方m当たり、炭素量は約250s、20立方mの建築物だと1棟当たり約5000s、全国の木造建築数約50万戸とすると、1年間に新に固定される炭素量は、約250万屯、これは日本の人工林の成長による炭素固定量の10%に相当。

 

6.光合成において二酸化炭素を固定する酵素はルビスコである。光合成を盛んに行うには、葉は多量のルビスコをもたなければならない。葉の全蛋白質重量の40%以上をルビスコが占めることさえある。

 

7.葉の内部に入った二酸化炭素は、湿度ほぼ100%の空気で満たされている細胞のすきまを拡散によって移動する。二酸化炭素の拡散量は濃度が高く拡散経路か短いほどよい。

 

 
 イ:根茎から養分吸収


1.
植物は根から無機窒素化合物を取り込んで、アミノ酸やタンパク質などの有機窒素化合物を合成している。植物のこの働きを窒素同化という。

 

2.窒素・リン酸・カリなどの植物の成長にとって必須の無機養分は、土壌の水分の中からイオンとして植物に取り込まれる。水分と同様に若い根の表皮をとおして吸収される。

 

3.無機イオンは道管、或いは仮道管の中へ一度分泌されると、蒸散流によって急速に上方へ輸送され、そして植物全体にいきわたる。

 

4.稲は大気中の二酸化炭素を吸収してお米となる。食べたご飯は体内で栄養素として吸収され、一部は不用となるので排出。二酸化炭素量は大気・水田・人間を循環するだけ。

 

★木はどんな物質でできているのか・・

  樹木とは、光合成過程で光エネルギーを使って水を分解して得た水素を、二酸化炭素に与えて二酸化炭素を炭水化物として固定化されたもである。

 

 木を構成する化学成分は、炭素約50%・水素約6%・酸素約44%であり、この元素組成は樹種が異なってもほとんど変わらない。窒素は幹を構成する材の部分にはほとんど含まれていない。それは幹材部分の細胞の大半が、死細胞から構成されているため。

 

 木材を構成する細胞は、セルロース・ヘミセルロース及びリグニンに大別される高分子の化学成分によって構成。それぞれの役割をもって樹幹を支持している。

 

 リグニンは組織の剛性を与え、機械的な衝撃から植物体を守り、さらにリグニンは微生物などによる攻撃にも大きな抵抗性を示す。

 

 樹齢数百年、高さ数十mとか、重さ数百トンの巨体を支え続けていられるのも、このリグニンのおかげである。

 
   
2.養分の貯えは親がつくってくれた旅立ちの弁当・・・
 

 独立栄養生物である植物は、光合成と根系の二系列から養分を吸収し、命の維持存続をはかっている。これらの活動は、決して従属栄養生物のためではない。自己の子孫を残すためである。花を咲かせ、実をつけて、撒布されることでシーズンの活動が終わる。これを毎年繰り返すのが植物の命の維持存続である。

 

 植物はどんなものを、体のどこに蓄え、それをどのように使うのだろうか。・デンプン、蛋白質、脂肪などの有機物の貯蔵庫は、根や葉や茎にため込む植物もある。

 

 ア:穀類・マメ類・イモ類の貯蔵場所 (・世界の三大作物・)


  世界中の人びとが主食的な食料として利用している植物は約200種程度。栽培されている植物3000〜5000種に比して意外と少ない。

 

 それらを大別すると穀類・マメ類・イモ類とその他に分けられる。穀類の大部分はイネ科植物である。コムギ・イネ・トウモロコシ・オオムギ・アワ・キビ・など。

 

1.穀類の食用利用部分は種子の胚乳で、8割から9割がデンプンで、残りが蛋白質と脂肪である。主食として栄養的に優れている。

 

2.マメ類はすべてマメ科に属する。ダイズ・ラッカセイ・エンドウ・ソラマメ・インゲンマメ・アズキなどが主なものである。食糧としてマメ類の利用部分はその種子で、2枚の子葉に蓄えられた蛋白質と脂肪を主成分とする。                   
マメ類にはデンプンや糖を含むものもあるが、蛋白質や脂肪をたくさん含むものが多いというのが特徴である。ダイズとラッカセイは種子の中に脂質を多く含んでおり、またダイズ・ソラマメ・エンドウ・インゲンマメなどは蛋白質を多く含んでいる。

 

3.イモ類は植物体の地下の一部が肥大成長して、主としてデンプンを蓄積したものである。地下茎が肥大した塊茎を利用するもの(ジャガイモ・サトイモなど)と、根が肥大した塊根を利用するもの(サツマイモ・キャッサバなど)とに分けられる。

 

4.穀類は主にイネ科に、マメ類はマメ科に属するが、イモ類はヒルガオ科・ナス科・トウダイグサ科・サトイモ科・ヤマノイモ科などいろんな科にちらばっているのが特徴である。

 

5.そこで人類はデンプン質の穀類と、蛋白質や脂肪に富むマメ類とをうまく組み合わせて食べながら、全体として必要な栄養を摂取している。

 

★学説紹介:木の名の由来・深津 正、小林義雄著より一部引用

 ブナ科の木の実は約20種類の樹木に実る。これを総称してドングリと言っているようだ。「団栗」の団は「丸い」の意味があり、「丸いクリ」と名づけられている。

 

 クリの語源は朝鮮語のKulによるものであるとの説がある。クリの実はKul-bamといい、bamは堅果、英語のnutにあたる言葉であり、またドングリを指す場合も多い。

 

 古い時代にクヌギの実のことを「つるばみ」といい、Kul-bamから転化したものではなかろうか。万葉集にはクヌギを植物染料として使っていたことが詠まれている。
 
分 類 食 品 名 水分 蛋白質 脂質 炭水化物 Na Ca Mg リンP
穀 類 玄米
精白米
59.8
60.0
4.2
3.5
1.0
0.3
34.4
36.1
1
1
95
29
7
3
49 7
130
34
いも類 さつまいも
じやがいも
66.1
79.8
1.2
1.6
0.2
0.1
31.5
17.6
4
1
470
410
40
3
25
20
46
40
マメ類 えんどう乾
大豆乾
13.4
12.5
21.7
35.3
2.3
19.0
60.4
28.2
1
1
870
1900
65
240
120
220
360
580
野菜類 だいこん根
たまねぎ茎
94.6
89.7
0.5
1.0
0.1
0.1
4.1
8.8
19
2
230
150
24
21
10
9
18
33

水分〜炭水化物はグラム単位・・ナトリウム〜リンまでミリグラム単位
(ナトリウムN・マグネシゥムMg・カルシゥムCa・カリゥムK・リンP・鉄Fe)


★注・・詳しくは「五訂日本食品標準成分表新規食品編」を参照

 

 
 イ:不足する養分の補給は・・・


  植物の根をとおして、地中の水分と養分を吸収し、葉の気孔から二酸化炭素を取り入れて光合成をおこなうなど、二系列から養分を取り入れている。

 

 特に農業の分野では、収穫量の増大を目的とすることから、肥沃な畑であっても含有成分だけでは不足してくる。これを人工的に補うのが肥料である。

 

 そこで主として追肥は、窒素・リン酸・カリの3つになる。3要素に次いで吸収がよいのは、カリシゥムとマグネシゥムである。・・5要素とも呼ばれている。

 

 この他にごく少量で足りる硫黄・鉄・マンガン・銅・モリブデン・ほう素・亜鉛・塩素を微量要素という。この成分は土地に含まれている量でまかなえることから施肥すことはない。

 

1.窒素は葉緑素の主成分であり、光合成において重要な働きをしている。一般に「葉肥え」ともいわれ、葉や茎の成長にとって重要。特に葉野菜類には欠かせない肥料である。

窒素は水に溶けやすく雨によって流失しやすいこと、不足すると葉の緑が淡くなって育ちが悪くなる。効きすぎると葉が大きく軟弱に育ち、倒れやすく、病害虫に弱くなり、果菜類では蔓ボケし、花つきや実つきが悪くなる。根菜類では茎やつるばかりが伸びて肝心のイモのできが悪くなる・・などの原因になる。

 

2.リン酸は「実肥え」ともいわれ、特に果菜や根菜にとって重要な成分。リン酸は生育の初期に特に必要なので、不足すると初期成長を害する。成長の盛んな部分・花・蕾に多い。不足すると根の張りが悪く寒さに弱くなる。冬を越すタマネギ栽培には欠かせない。イチゴ・トマト・スイカなどの花や果実のつきが悪く、味も落ちる。リン酸は雨による流亡が少ないので、全量を元肥えとして施す。

 

3.カリは「根肥え」ともいわれ、特に根菜類には重要な成分。根の発育、耐寒性、耐病性を高める作用があるので栽培の全期間必要。不足すると炭水化物の合成が妨げられ、サツマイモ・ジャガイモなどで収量が低下。窒素同様に水に溶けやすく流亡しやすいので、栽培期間の長い種類は追肥が必要。

 

4.石灰(カルシウム)は酸性度の中和剤として一般的に使用。蛋白質を作るのに関係し、根の発育に欠かせない。病害虫の抵抗力を増す。過燐酸石灰や化成肥料と混ぜるとリン酸は溶けにくくなったり、窒素の肥効が減少。

 

5.マグネシウム(苦土)は葉緑素の構成元素であり、不足すると古い葉より葉脈の間が黄化現象をおこす。酸性度の改良はマグネシウムを補うために消石灰より苦土石灰を施用するとよい。

 

6.

有機質肥料の成分 油 か す N・ 5 P・ 2 K・ 1 (対比率)
    〃 骨 粉 N・ 4 P・20 K・ 1 〃
無機質肥料の成分 尿 素 N・46 P・ 0 K・ 0  〃
    〃  (化成肥料) 48 号 N・16 P・16 K・16 〃

 

 
 ウ:冬季の凍結を防ぐために、蓄積養分は変わります
 

 樹木は移動できないので、生えている場所の気候に適応して生きている。秋から冬にかけて寒さがくると耐凍性を獲得して、ハイマツやダケカンバなどはマイナス70℃以下の温度でも耐えられるようになる。南方のマングローブは凍結に耐えられない。

 

 寒さに対する木の抵抗力(耐凍性)は木の種類によって異なる。高い耐凍性を得るためには秋から冬にかけての準備が必要。落葉も越冬のすごし方であり、新芽を何枚もの芽鱗で被ったり、幹の水分を減らす仕組み、など対応はいろいろであるが、細胞内の養分のバランスの変動が肝心のようである。耐凍性を増やすには・・

 

1.細胞液中の糖含有量を増やし、浸透圧を高めて凍りにくくする。細胞液の浸透圧を高めるには細胞を脱水させる方法がある。

 

2.耐凍性が増大するときには、まず準備段階として、主にデンプン・中性脂肪などを蓄積する。寒さがきた次の段階で、核酸・タンパク質が増加して活発な代謝を行い、デンプンを分解して糖を作り、中性脂質をリン脂質に転換して耐凍性を獲得する。

 

3.実際、耐凍性の増大にほぼ比例して細胞内のショ糖が増加することが観察されている。ショ糖の増加によって浸透圧を高め、細胞液を凍りにくくしている。

 

4.リン脂質は細胞膜の主要構成成分で、秋から冬にかけて木ではリン脂質が増加して、細胞の外側に氷の結晶ができた場合でも細胞膜が破れないようにしている。

 

5.根や幹が凍っている針葉樹の葉では、水分量が通常の二分の一から三分の一にまで減少している。寒さのしのぎ方は、細胞を生理的な乾燥状態にすることである。

 

(文責:田代 誠一)

 
 
   
   
【参考資料】
・樹木社会学   東京大学出版会/渡邊定元著
・植物の世界4巻   朝日新聞社/柳津広志著
・花・鳥・虫のしがらみ進化論   築地書館/上田啓介著
・花ごよみ種ごよみ   文一総合出版/高橋新一著
・基礎栄養学   講談社サイエンティフィク/木戸康博他著
・新版衛生   管理・中央労働災害防止協会編  他
 
   
 
   
   
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