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植 物 談 義    第20話

土筆はスギナの子か?・・団栗は坊ちゃんか?

童謡の2題の中から「つくしの親子関係」・「どんぐりの性別」を探究

 

  春の芽吹きの中でも「ツクシ」は大勢の人の心をなごませる。散策の途中で土筆との出会いは楽しいものである。さて問題は「ツクシ誰の子、スギナの子」と歌われているが、本当に親子関係にあるのでしょうか・・?

 
   
1.植物学では親子にあらず・・?
 

 日本の春の風物詩であるツクシの芽生えは、ついつい童謡の歌詞を口ずさむほど馴染み深い。その中でツクシはスギナの子どもになっている。2月の中頃から日当たりのよい土手にツクシが顔をだす。スギナは少し遅れて生えることから「親が子供より後に生えるのもおかしな現象である。」・・これだけでは親子関係は断定できない。

 

 スギナ(杉菜)は、トクサ科・トクサ属に分類。植物界の中でも古い部類に所属。植物誕生の足跡を遡っていくと、ご存知のとおり「緑藻類・コケ植物・シダ植物・裸子植物・被子植物」の進化の過程をたどってきた。

 

 約3億年前の石炭紀にシダ植物の大森林が出現。少し遅れて裸子植物が出現し、ジュラ紀(約2億1千万年〜1億4千万年前)に裸子植物の繁栄期を迎える。

 

★学説紹介:植物の世界・鈴木武著及びしだの図鑑・光田重幸著より一部引用


 ツクシの芽は秋のうちに地中でつくられ、はかまに被われている。乾燥気味の場所に多く生え、山野や路傍によくみられる。地上茎に2形ある。スギナは光合成をおこなう緑色の栄養茎を、ツクシは淡褐色で光合成能力のない胞子茎をさす。胞子茎が白っぽいのは胞子放出のあと。両者はたがいに地下茎でつながっている。   

(参考:スギナは夏緑性、トクサは常緑性 )

 

 ツクシのはかま(葉鞘)は葉の集まりであり、葉鞘で被われた部分は節であり、節と節との節間は中空である。スギナの車輪状に広がるのは枝である。

 

 トクサ属では茎と枝で光合成をおこない、その表面には気孔がある。トクサは茎の表面に珪酸を含み、研磨に用いられたことから「砥草」の名がついた。

 以上の学説にもあるとおり、地下茎でつながっているツクシとスギナは「血縁関係」にあることは間違いないにしても、あまり似ていない兄弟のようである。

 

 胞子茎と栄養茎では育ちが全く異なる形態であるが、地下茎なしでは生きていけない植物である。共に地下茎から誕生することから、地下では親子関係、地上では兄弟関係が見え隠れする。


 大変おかしな植物であるが、植物誕生から少しずつ進化の道を辿ってきたツクシとスギナは、太古の姿を今に伝える貴重な標本でもある。
 
   
2.団栗は坊ちゃんで、女の子はいないのか・・・?
 

 ドジョウが出てきて今日は、坊ちゃんいっしょに遊びましょう・・と歌われている童謡は、老若男女に共通するアイドル的存在感がある。植物界を題材にした「童謡や童話やお伽噺」がいろいろある中で、団栗やツクシは植物界でも人気が高い。

 ところで、植物学的には「どんぐり」という植物はない。ブナ科の木の実を総称した呼び名であって、約20種の木の実が「どんぐり」に該当する。

 

 しかも、ころころと転げる「木の実」が対象であることから、「丸い木の実」は「クヌギ」であるとの定説がある。他の木の実はコロコロと転げそうにない。


★学説紹介:木の名の由来・深津 正、小林義雄著より一部引用

 

 ブナ科の木の実は約20種類の樹木に実る。これを総称してドングリと言っているようだ。「団栗」の団は「丸い」の意味があり、「丸いクリ」と名づけられている。

 

 クリの語源は朝鮮語のKulによるものであるとの説がある。クリの実はKul-bamといい、bamは堅果、英語のnutにあたる言葉であり、またドングリを指す場合も多い。

 

 古い時代にクヌギの実のことを「つるばみ」といい、Kul-bamから転化したものではなかろうか。万葉集にはクヌギを植物染料として使っていたことが詠まれている。

 

 さて、坊ちゃんとドジョウは仲良く遊んだのですが、後はどうなったのでしょうか? 歌詞の続きは「遊び疲れたドングリは、やっぱりお山が恋しいと、泣いてはドジョウを困らせた」。

 

 これでお終いのようですが、実は3番があって「仲良しリスが跳んできて、落ち葉にくるんでおんぶして、お山につれて帰ったとサー。

 
   
3.ドングリの花は単性雌雄同株で
 

 さて、問題の「坊ちゃん論争」は決着がついていないのである。ブナ科の植物の花は雄花と雌花が別々に同じ個体(株)に咲くことから、これを単性雌雄同株という。

 

 花粉の交配は風媒(ブナ属・コナラ属)によるものと虫媒(シイ属・マテバシイ属・クリ属)に頼っているタイプがある。このような交配の結果、結実したのがドングリであり、当然雌花にしかドングリの実はつかない。

 

 次の世代を育てるにはドングリを種として蒔かなければならない。種子には雄花・雌花の遺伝子が同居しており、坊ちゃんとも嬢ちゃんとも断定できないのは当然である。人間のように男女の産み分けはできないのである。

 

 さて、植物学的にツクシやドングリの生活がわかったところで、坊ちゃん論争の結論的なことになるが、遊び相手が「どじょう」であれば「坊ちゃん」が適切であり、女の子では格好がわるいし、大和撫子がだいなしである。

 

(文責:田代 誠一)

 
   
   
【参考資料】
「樹木社会学」 東大出版会  渡邊定元著
「植物の世界」 朝日新聞社  鈴木 武著
「木の名の由来」 日本林業技術協会  深津 正、小林義雄著 他
 
   
 
   
   
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