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植 物 談 義    第15話
  「木の文化の伝承こそ、森林を生き返らせるみちです」
日本は森林国なのに外国産材に頼りすぎてはいませんか・・・

 

 我が国の興立は「木の文化」の伝承があったからといっても過言ではない。今から1400年ほど昔、7世紀の初頭に奈良の法隆寺が建立された。今や世界最古の木造建築物である..。

 

 現法隆寺は約300m平方の土塀に囲まれ、境内には国宝・重要文化財の建築物49棟、仏像214体、宝物184件が日本美術史の最高の宝庫として保存されている。

 

 これらの財宝の多くは、植物を原材料とするものが多く、太古の昔から使用方法の伝承と技術的進歩により、木の文化が生かされてきた証である。

 

 現代人は草本や木本のもつ特性をもう一度振り返り、森林資源の恩恵を振り返り、木の文化を承知しないことには二酸化炭素の削減や地球温暖化や環境浄化などが改善されることはない。

 

 
   
1.ムダな木材消費はゆるされない・・・

 

 日本国民は平均して1人当たり約1立方b/年の木材を消費する。木材を原材料とする製品の全てを平均化したものであり、毎年連続的に消費するのだから相当の量になる。

 

 世界の森林面積は陸地面積の約27%を占めており、日本の森林率は67%と高く緑豊かな国のようであるが、1人当たりの森林は0.2f(世界平均=0.6f:カナダ=7.9f:中国=0.1fなど)でしかない。

 

 国内の森林は人工林約1千万f・41%、天然林約1千5百万f・59%の林相区分にあり、蓄積は毎年人工林を中心に約8千万立方bづつ増加しているという。

 

 ところが世界の森林は1990年から5年間で日本の国土面積の約1.5倍に相当する5635万fが減少しているのである。特にブラジルや南米やアフリカなどの熱帯地域での減少がめだつ。原因は人口増加・貧困・食糧不足・焼畑の拡大・燃料・放牧、などである。

 

 森林資源は再生産が可能な資源であり、石炭や原油などのように一代限りでないことを深く広く展開しないことには、地球がますます怪しくなってくる。

 

 世界統計の木材の用途別消費は、薪炭材が全体の約50%弱であることに文化の較差を感じざるをえない。伐採跡地の再生産体制が確立していないとなると環境破壊は必然的である。

 
   
2.森林林業白書でも警告している森林の劣化減少・・

 

 前述した問題点に対して、先に発表された「14年度・森林林業白書」の第1章「世界の森林の動向と我が国の森林整備の方向」の中で、取り組みの姿勢が明示されている。

 

1.先進国として開発途上地域において森林の多面的機能が持続的に発揮されるように国際協力を推進していく必要がある。

 

2.熱帯林の保全や復旧のための植林協力と併せて、住民が自発的に森林の維持、造成に取り組む林業の確立、森林管理計画の作成などの支援を実施していく必要がある。

 

3.世界的に進行する森林の減少と劣化は、利便性や効率性を優先し、森林の持続的利用への配慮を怠った木材貿易は、過剰な伐採や違法な伐採を誘発し、森林の減少・劣化に拍車をかけるおそれがある。

 

 

4.我が国の森林整備の現状は、二酸化炭素の吸収量=3.9%の確保に向けてきちんと手を入れることが必要である。また水源涵養や木材供給などの多面的機能が発揮されるように持続可能な森林経営の推進が重要になっている。

 

5.長引く価格低迷等から林業生産活動は停滞し、森林が十分に利用されない状況にある。資源として利用されないことによる整備のおくれは、森林のもつ多面的機能の発揮に支障をきたし、森林が劣化するおそれがある。

 

 
   
3.森林の劣化はすすんでいる・・・「木の文化」の利用拡大が森林を守る

 

 木材消費のなかで外国産材に依存している量が約80%強、国産材は20%弱の比率にあり、価格競争の中で安価な方向に全てが動いていることに、国内産業の停滞・廃業がめだつ。

 

 このことは森林林業白書の中でも述べている。利便性や効率性を優先した木材貿易の弊害を外国のことのようにいっているが、日本でも該当する指摘である。

 

 国内の森林の多くは、価格低迷からやる気を無くした森林所有者や、いっこうに進まない温暖化防止対策、森林が負担する削減義務を履行するためには地主に何か求めているのか・・。

 

 放置された森林の増加傾向など、森林に係わる環境や政策に明るい要因は何も見えていないのが実情である。末端の地方では何も変わっていないし、新しい政策も見えない。

 

 そのような中で、中国からの割り箸の輸入量が99%を占めると聞いてあきれている。(平成18年7月5日付け・西日本新聞記事による)。国内産はわずか1%であり、吉野地方の生産業者は死に体である。これでは国内生産業の取りつぶしであり、林業政策の誤りを指摘したい。

 

 割り箸が森林資源を食い荒らしていると騒がれたことがある。本当にそうだろうか・・・。森林資源のムダ遣いを指摘するのであれば、日常生活の身の回りに数多のムダがある。

 

★ 菓子箱・折り箱・化粧箱などの木製の箱製品は、リサイクルに向かないためほとんどが焼却されている。

 

★ コンピュータ用紙・広告用紙・包装用紙・雑誌類など紙の使用量は文化のバロメーターといわれてた時代もあったが、現代ではムダな使用量を包含する指針でもある。

 
   
4.「木の文化」をもっと推進し、森林の活性化に拍車を・・

 

 ムダな使用は資源の食いつぶしであるが、再生産が可能な森林資源は大事に保護、保存するだけでは充実した森林には成り得ないのである。もっと木を使う方針がほしい・・・。盛んに間伐をおこない伐採期が到来した林分は次期の森林に向かって更新することが森林施業の基本であり、昔から踏襲してきたやり方である。

 

 吉野林業は1f当たり1万本を植林する。緻密な材質を期待しながら育てるやり方は、当地とは大きな違いがある。1f当たり3千本を植え付けた森林の材質とは判然としている。材質の特性を最も顕著に使い現したのが「吉野杉の割り箸」である。小さな文化であるが使用範囲は国内の隅々までいきたわたる。

 

1.我が国で最古の木製の箸は、飛鳥板蓋宮跡や藤原宮跡から出土しているし、遣隋使の小野妹子が持ち帰った箸食を聖徳太子が採用したともいわれている。この二本箸の歴史に比べ、割り箸は江戸後期の文政年間(1818〜30)が起源とされ、比較的新しい形式である。

 

2.スギの割り箸は、明治10年頃、大和の吉野地方で作られたのが始まりという。吉野林業は灘や伏見の醸造用の酒樽材を供給する産地であり、独特の林業技術を継承している地方。

 

 

3.丸太から角材を製材した残りの廃材の部分を背板とか端材などと呼んでいるが、これを使ってスギ割り箸を製品化している。

 

4.市販のスギ割り箸の幅は14oあり、約1o毎に年輪が1個ある。それだけ緻密な成長をたどることできれいに割ることができるのである。

 

  割り箸の14oの幅に年輪が5〜6個あったのでは 「割裂性」は生じえないし、原材料としては不向きである。

 

 

5.割り箸は木材の形態的特性や強度的性質の一つである「割裂性」を利用。安い割り箸は繊維が交差したり、繊維の目切れがあったりで、きれいに先から手元までが割れないものがある。

 

6.日本で1年間に消費される割り箸は、林野庁によると約258億膳(木材換算・約495千立方b・全木材消費量の約0.04%に相当)。国産はスギ・ヒノキ・アカマツの端材から約1%を生産し、輸入品はシラカバ・アスペン・クズバ・モミ・トウヒなどを利用。 

皿倉山のスギ見本・3千本/f 植え付け
(文責:田代 誠一)
 
   
   
【参考資料】
樹木がはぐくんだ食文化  研成社  渡辺弘之 著
木のひみつ・東京書箱  京都大学木質科学研究所 著
木の100不思議  日本林業技術協会  金谷紀行 著
大日本百科事典  小学館 著
 
   
 
   
   
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